Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第37回−8

1877年12月28日 金曜日
数人のお友達を今夜招いてあったので、一日中支度に追われた。
私は気分が悪くて、支度をするのが苦痛だったのだけれど、お客様がいらっしゃってからは嬉しくて元気になった。
大鳥家のおひなさん、おゆきさんの二人が四時頃に竹下さんというお友達を一人連れて来た。
竹下さんのお兄様の寅吉さんは商法学校の学生だということだ。
感じのいいお嬢さんだったけれど、招かれていない友達を大鳥さんたちが連れてきたのは、礼儀に反する。
少なくともアメリカでは失礼になる。
でも、あの方たちは、そういうことをなさりそうな方だ。
次に種田夫人、それから津田先生の長女である琴さん、神田次郎氏が見えた。
しばらくしてから横山氏がみえたが、この方はのべつ冗談ばかり云っていた。
学者らしい上品な身のこなしと、真面目で謹厳な表情の持ち主である種田氏は、ふざけている横山氏を不思議そうに見ておられたが、やがて母に聞いてきた。
「あの人は一体、誰ですか? 日本人であんな事をする人は見たことがありませんな。何処かで見たアメリカ人のようです」
上杉氏も批判的な顔つきで見ておいでになった。
横山氏は女性のそばにくっついてみんなを笑わせるために、くだらない冗談ばかり仰っていた。
上杉氏と婚約者のおひなさんとは、まるで見知らぬ他人のように、お互いに全然関心を示さなかった。
まあ、本当に日本人の恋人ったら! 


種田氏の若い奥様が、上手に歌を歌ってくださった。
それからみんな「皿転がし」のゲームをして、とても面白かった。後でみんな罰金を払わされたのである。
横山氏が裁判官で私たちにいろいろ変な真似をさせた。
謹厳な種田氏は、椅子を持って部屋中を歩き回された上に、一番可愛い女性にお辞儀を三回するように、と云われた。
その“一番可愛い女性”は私だった!
上杉氏は清国の歌を歌わせられた。その上にご自分で買って出て演説をなさった。
商法講習所の矢野氏は女性に跪かされた。
おひなさんは一番好きな人にキスをさせられた――これも選ばれた相手は私だった。
アディは蟹のように歩かされる、といった具合だった。
それから気の利いた夕食が出て、全体として上手くいったと思う。
今日のお客様はあまりしっくりいかなかったけれど、たいして準備をしない時は上手くいって、大騒ぎして準備をするとたいてい失敗する。
矢野氏は大変ご満悦で「こういう集まりなら申し分ありませんな」と仰った。
横山氏は騒ぎ過ぎて、疲れきって椅子に深々と腰を下ろしていた。
「こんなに楽しかったのは久しぶりです」
種田夫妻は「とても楽しかった」と仰って、私をおうちへ招待して下さった。
竹下さんは帰りがけに「どうぞ遊びにいらして下さい」と小声で仰った。
麻布で富田氏の隣に住んでいらっしゃるということだ。