Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第38回−6

1878年1月10日 木曜日
楽しい夕べであった。
お客様は十時頃にお帰りになったが、私たちは十二時過ぎまで起きていた。
母は素敵なコートを寝る時に二階に持って行った――夢の中でも忘れないように。
今朝は富田氏と杉田氏のお宅に伺って楽しい時を過ごした。
富田夫人は神経病と熱病に悩まされておられ、やっと回復なさったところだったが、いろいろ親切にして下さった。
杉田先生のお宅では、皆さんがにこにこしてお辞儀をされた。
日本人の「お約束」ともいえる「おめでとう」の繰り返し。
夫人がお茶やお菓子を出して下さり、盛がお魚の包みが三つ載せてある台を持ってきた。
これは新年のお客様へのご挨拶の印なのだ。
話が新年の行事のことに及ぶと、杉田夫人は礼儀作法の本を出してこられた。
使い古された本だけれど、この中には礼儀作法に関することがすべて書いてある。
あの食べにくいうどんを女性が上品に食べる方法を説明した挿絵があった。
それから贈り物の包み方とか、お返しに使う白い紙の説明も。
また活け花の鑑賞の仕方から、手水鉢で手を洗う方法、鼻のかみ方、髪の洗い方、冠婚葬祭の作法などの説明もあった。
私は結婚式における花嫁の心得を書いた本と、百人の有名な歌人の歌集を頂いて大変嬉しかった。


杉田夫人からご自分の結婚式のお話も伺った。
素晴らしく美しい衣装をお召しになり、提灯や箱や槍を持った男たちを先頭に、腰元を従えて駕籠に乗っていかれたそうである。
「主人が云っていたと思いますけれど、私のこの時の着物はクララさんが結婚される時に差し上げますからね」
日本の結婚式は夜に行われる決まりとなっているので、花嫁が夫の家に行く時は既に日が暮れて居て、提灯がともされていたのだ。
漆塗りの箱には花嫁の衣装が入っていて、上には赤い絹の布が被せてある(ちなみにその箱は今、盛が使っている)。
槍を持って行くのは士族の女は武器の使い方を心得ていることになっているからである。
杉田夫人は槍に被せてあった赤い絹のカバーを見せて下さった。
この豪華な結婚式の話を聞いていると、古い昔の日本に戻ったような気がした。