Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第41回解説

【クララの明治日記 超訳版解説第41回】
「先週の大鳥圭介夫人の葬儀に引き続き、今回はおやおさんの婚約者四十七日ですわね」
「法事の模様はこれこそ現代と殆ど代わりはないと思うから、今回はおやおさん特集と云うことで」
「おやおさんこと松平八百子さんは元治元年、西暦で云うと1864年4月1日生まれですから、この日記の時点での年は14歳ですわね」
「彼女の実の父親は、出雲松江藩第10代藩主松平定安公。おやおさんはその四女に当たります。越前松平家結城秀康の三男松平直政直系の家系ね。
だけど定安公自身は、同じ越前松平家の分家筋であり、結城秀康公の長男忠直系の美作津山藩からの養子だったりします。同じ越前松平家の分家同士で、優秀な藩主のやりとりをしていたわけ」
「なんだか複雑ですわね。しかし越前松平家で、忠直と云いますと、菊池寛の『忠直卿行状記』で取り上げられたあの暴君でしょう? あまりいいイメージはありませんわね」
「あれは殆どフィクションだけどね。子孫の人たちにはいい迷惑よ。
ところで唐突だけど、先日薩摩切子展を見てきたのよ」
「なんですの、本当に突然?」
「丁度そこで越前松平家に伝わる薩摩切子が展示されていたのよね。
越前松平家はある程度交流があったようなので“わぁ、おやおさんも小さい頃これを見たのかしら?”って思ったら、萌えて萌えて♪」
「……萌えの使い方、間違っていませんの、貴女のそれは?」
「美しい薩摩切子を目を輝かせて見つめる幼女時代の可愛いおやおさん。それを想像すれば、ご飯三杯は軽いわよ♪」
「ご飯三杯ってなんなんですの!?」
「さて、出雲松江藩の姫様であった八百姫は、父親の実家である美作津山藩に養女に行くことになったのだけど」
「……勝手に進めてなさい」
「養子に行った先を継いでいたのは将軍徳川家斉の実子松平斉民公、世に言う確堂公ね。つまり、この時点でおやおさんは将軍様の義理の孫となったわけ」
「それにしても変わっていましてね。クララの日記の原文を見る限り、おやおさんは“婚約者”として法事に出席したわけではなく“義理の兄”の法事に参加したことになっているのでしょう? 
正式に結婚する前から、相手の家の養女になっている、というのは日本の大名家では普通ですの?」
「普通かどうかは知らないけれど、珍しくはないと思う。
よく大名の結婚年齢が12とか13で吃驚されることがあるけれど、実際に“夫婦”となるのは少し先で、それまで妻となる女性は相手の家に入って色々その家のこと教わる、というのは珍しくないし。
その状態のことを“養女”と表現するなら、おやおさんはその通りの境遇だよね」
「で、斉民公の長子であり、後継者であった康倫氏が亡くなったと云うことで、後継者の地位も、おやおさんの婚約者としての地位も弟である康民氏が引き継いだ、ということですわね。……なんだか女性を馬鹿にしている気が致しますけれど」
「それはこの当時の大名家の娘なら仕方ないわよ。特に幕末維新期には急激に徳川一門も求心力を失いつつあるところだし、一族の結束を図るためにも、徳川一門同士での結婚は当時としては当然の選択よね。
そもそも“自分でよい人を探せ”と云われた方が困るわよ。特におっとりとしたおやおさんのことなんだし」
「それはそうでしょうけれど……納得いきませんわ」
「ユウメイの国の後宮制度よりはマシ、とは思うけどね」
「それを云われると言い返す言葉がありませんわ……」
「さて、それではこの後のおやおさんのことを。
先程ユウメイがさらりと云った通り、この後、おやおさんは婚約者の弟であった松平康民氏と結婚することになります。
正直なところ、各種資料を紐解いても結婚後の生活については殆ど分かりませんが、子宝には恵まれたようです。
長男は比較的早逝してしまったので松平家は次男が継ぎ貴族院議員などを務め、その次男の子供は後にNHKプロデューサーとなります。
三男は谷崎潤一郎の『細雪』のモデルとなった森田家四姉妹の三女重子と結婚。
森田家と関わりの深かった――森田家の二女が妻松子という関係で――谷崎潤一郎が第二次大戦中の疎開先を津山市に据えたのは、恐らく地元での松平家の威光があったためと思われます」
谷崎潤一郎というと、わたくし、詳しく存じませんけれど、その……あまり、ごく一般的な倫理観の女性とは……相容れない気が致しますけれど?」
「おやおさんがその頃まで生きていたら、さぞ頭を悩ませたでしょうね。
ですけれど、残念ながら大正13年、つまり1924年におやおさんは亡くなっています。享年59歳ということで、まだ若かったのに残念なことだけれど。
墓所は徳川一門が眠る寛永寺谷中墓地に今もあって、松平確堂公の墓域内で眠っています。戒名は“誠光院殿明誉随照雙葉大姉”」
「よく分かりませんけれど、雰囲気的にもおやおさんらしいですわね」
「というわけで、今週は先走っておやおさんの一生を語ってしまったけど、今後もしばらくはおやおさんの出番もありますので今後の活躍にも期待して下さい♪」
(終)


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