Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第45回−3

1878年4月17日 水曜日 
今日、アディと母と私は、勝氏一家と向島へ行った。
勝夫人、お逸、おゆめ、おせきの四人は私たちの家から一緒だったけれど、小鹿さんは先に行かれた。
よく晴れて桜が綺麗だった。
向島は濃い八重桜が満開で、枝が道の上に広がり、美しいアーチを作っていた。
そよ風に花びらが雪のように降り注ぐ。
水の上に優雅にしだれている枝に一人の男が歌を結びつけていた。
お逸がそれを詠んでくれた。
『水の面に広がる桜見る度に 我思ふなり十六の乙女を』
私もこんな歌を書いて枝に結びつけたいものだと思った。
『風吹けば桜は散りて消えゆけど 神は絶えせず世を治めたまふ』
お昼頃、勝家の別邸に到着した。
美しい庭があってここも桜が満開だった。
真っ赤な楓の葉も美しかった。
躑躅、小手毬、椿が、松、杉、月桂樹の緑に映えている。
全て前に来た時と変わらないが、一段と美しくなっているかであった。
素敵な日本料理が出た。
けれどこれについては、ちょっとごたごたがあった。
というのは小鹿さんが朝注文したお料理が、間違って何処か余所の家に配達されてしまったのだ。
だから、もう一度料理する間待たされたのである。
その時間がなんとも退屈で、本でも読みたいと思った。
だるいのと眠いのに加えて、体が少し痛んだ。洋服が厚地で、走り回ることもできないし。
小鹿さんもだるいらしくて一日中煙草を吹かしてばかりいた。
お逸もまたつまらなさそうな顔をしている。
彼女はお兄様に綱引きとかそういった乱暴なゲームをやらせたかったのだ。
本当に仲の良い兄妹だと思う。……お兄様は大変そうだけれど。 
帰りは月明かりの中を帰ってきた。
「日本ではね、よく月明かりに花見をして、歌を沢山詠む人がいるのよ」
月明かりの下の桜の幻想的な光景はお逸の解説に説得力を持たせた。
でも一方、下界に目を転じてみれば、通りには酒を飲み過ぎた酔っぱらいが一杯。
しかし、誰も彼も無邪気な連中ばかりだった。
一人はお菓子をどうぞと差し出したり、一人は母の人力車に倒れかかって、死んだふりをした。
周りの人は面白がったけれど、アディは吃驚仰天した。