Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第47回−4

1878年5月16日 木曜日 
今月の14日の朝、恐ろしい暗殺事件があった。
大久保利通氏が太政官への途中、赤坂の官邸から五町と離れていない地点で五人の男に殺されたのだ。
「それでね、それでね!」
今日やって来たお逸が興奮気味に詳細を語ってくれた。
大久保氏の車が清水谷という静かな人通りの少ないところを通り過ぎようとした時のことだそうだ。
淡い青の服を着て、撫子の花を一輪持ち、歌を歌いながら通りかかった青年がいた。
車が近くに来ると青年は花を投げ捨てた。
「男はあいくちを抜いて走り出すと、車を牽いていた馬に斬りつけ、立て続けにピストルを撃ったのよ!」
これが合図だった。
伏兵の四人の男が走り出てくると、車の中にいた大久保内務卿を襲い、御者諸共に殺害してしまった。
なんとか難を逃れた別当は急を報せに官邸へ駈けていった。
しかし警察や護衛が到着した時には既に時遅し。
「大久保氏の頭は二つに割られていてね、胸には刀が柄まで突き刺さったまま。両手は切り落とされ、そのほか全身膾斬りにされていたのよ!」
お逸は本当に見てきたように云う。
政府の高官であった勝氏のところに詳細な情報が届いているのだろう。
御者も馬も斬り殺され、結局難を逃れたのは別当だけだった。
暗殺者たちは官邸に赴き、守衛に自首した。
その後の噂では拷問にかけられているということだ。
一番年長者が三十一歳で、最年少者は十七歳という若い人だった。
不思議なことに一人だけ平民だが、後は皆石川県出身の士族で西郷の弟子だった。
大久保と争った西郷の復讐のためにしたことだったのである。
なお、念のために断っておくけれど、これは私たちの友人である大久保一翁氏とは関係のないことだ。
こちらの大久保氏も偉いには偉いけれど、人望がある。
最近不思議に人気の出て来た徳川政府で高い地位にあった方である。
アディは一日中杉田家に遊びに行っていた。
ド・ボワンヴィル夫人に女の赤ちゃんが生まれた。
土曜日には私たちは写真を撮りに行く。
蠣殻町にかかっている新しい芝居は「勝安房守の闘い」と題するもので、十二年前上野で起こった革命における勝提督の役割を描いたものである。
見に行きたいと思う。
お逸も目を輝かせて「絶対に行く」と云っていた。
それにしても、自分の父親が主人公の舞台を見るというのは一体どんな気分なのだろう?