Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第48回−7

1878年6月4日 火曜日
昨夜、学生が来たことをお逸に話したら非常に喜んでくれた。
「当然のことよね!」
一緒に芝に行き、それから勝家に行った。
夫人が出て来られて、私に色々親切に云って下さり、私たちの困難に同情して下さった。
「きっと万事上手くいきますよ。貴女がたは幸福になり、今の悩みは忘れてしまうようになるに違いありませんから、心配しないようお母様にお伝え下さい」
ご親切な夫人はこうも仰ってくださった。
「もし本当にどうにもならない事態に万一なった時には、いつでもうちに来て良いのだということを忘れないで下さい。そしてもしみんな留守をなさることがあって、アディをどうして良いか分からないような時には、うちにお寄越しなさい。自分の娘と同じように私が世話しますよ」
海軍提督の奥様が、このように仰って私たちを慰めて下さるなんて、なんとご親切なのであろう。
奥様は更にこうも云って下さった。
「いつでも淋しかったら、うちに来て子供たちと遊んでいくように」
その他いろいろご親切な伝言を母に下さった。
私たちは庭に出て、棕櫚や梅、桃、椿、梨、日除けの木々などや藤の蔓や菊を見て回った。
植えたばかりの梨の木があった。
「実がなったら大きい綺麗な梨をあげるからね!」
お逸はそう約束してくれたけれど、その若木にはまだ当分実はなりそうにない。
そのあと蚕を見に行っていろいろ新しいことを学んだ。
最初私はむくむくと動く虫を見て、気味が悪くて仕方なかった。
けれど大事に育てておられる奥様に悪いと思って我慢した。
そして一匹を手の平にのせてしげしげと観察し、いろいろ質問して教えて頂いた。
ありとあらゆる段階の蚕――赤ん坊からさなぎになりかけているものまで――がいた。
あるものは桑の葉をせっせと食べていたけれど、その音は雨の音のよう。
いかにも葉が美味しくて仕方ない様子だった。
あの雨のぱらつくような音は満足の意思表示かもしれない。
子鹿さんは新しい部屋に移っていたけれど、その部屋の素敵なこと。
隣に素晴らしい書斎がついている。
この名門の御曹司は古ぼけた着物に、腰の周りに青い紐をしめ、裸足であった。
後で客間に入り、空豆を山ほど食べてから日本のゲームをした。
参加した子供は合計七人。
各々先の尖った爪楊枝を持って、驚くほど早く豆を片付けながら、同時に七つの口と百五十本の小さい歯でもって豆やお菓子を平らげた。
ゲームは「お茶盆」というものだった。
おせきが目を隠して床に坐り、手に竹のお盆を持たされる。
他の人はみんな位置を変える。
おせきはすぐ右にいる梅太郎の前にお盆を差し出してこう云った。
「奥様、お茶を召し上がって下さい」
彼女の間違いにみんなはどっと笑い、彼女はまたやり直さなければならない。
間違わずに七郎を捕まえるまで繰り返させられる。
そうしてお逸、お輝、梅太郎、玄亀、アディ、私と次々に「お盆さん」にさせられたところでこのゲームは終わり、その後に賑やかに目隠し鬼をした。
そしてお土産をお菓子一杯頂いてお暇した。
うちに帰ってみたら母は大変動揺していた。
というのは、富田氏が来てこう忠告したというのだ。
「奥様、クララさんを一度アメリカに連れて帰って結婚させてから、また日本に来るようにしては如何ですか?」
なんて馬鹿げた話。
私がまるで結婚したがっているかのよう!
富田氏は母の気持ちが分かっているから、日本人の男性は勧めないと云ったそうだ。
母はそういった結婚観に対して意見を述べておいたそうだ。
呆れた話だ。