Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第48回−8

1878年6月5日 水曜日
午後森氏を訪問した。
森氏は外務大輔に就任するために、清国駐在公使をしておられた北京から帰って来られたのだ。
親切に家の人たちの様子をお尋ねになった。
奥様は心配そうで、元気がなかった。
英という名の赤ちゃんが生まれており、上のお子さんの清さんは三歳の立派な坊ちゃんに育っていた。
森家から上杉家に回ったが、ご夫妻ともあいにくお留守。
次に杉田家に寄ってみたが、杉田先生のところは大変厄介なことが起きて弱りきっておられた。
先生のお弟子さんの石上勝治という、貧しいが気だての良い人が、処方薬を作る時に間違えて子供を死なせてしまったのだ。
不注意だったことは明白だったそうだ。
薬剤師用の秤にかけて薬を作ったのだったけれど、この秤に、ほんの少しではあったが、阿片やクロロホルムが付着していたのに、洗わなかったのである。
それで毒が混じってしまって、子供は即死した。
検死の結果毒の存在が分かった。
子供の父親はかんかんに怒って、石上さんだけなく杉田先生にも復讐をすると云っているので、両方とも罰せられるかもしれない。
先生の方は士族でもあるし、罰金で済む可能性がある。
しかしお弟子さんの方は「平民」であって、子供の親は士族ときているので、苦境に立たされるであろう。
杉田夫人はこのことでひどく心配しておられるのだ。
私たちは適当な家が見つかり次第、引っ越すことにしている。
私は鳥居坂にあって上杉家、勝家、杉田家に近い一軒の家が気に入っている。
しかし、その家の持ち主は奇人で、狐に憑かれていると人は云うらしい。
良い家だけれど、古くて荒れている。