Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第48回−9

1878年6月6日 木曜日
母は学生たちの綴りの能力や、フッカー著『自然の本』の知識について試験をしているけれど、とても苦労で、このまま続けていったら病気になってしまうのではないかと思う。
疋田家の玄亀ちゃんが一日中アディと遊んでいったけれど、その他にも大勢の来訪者があった。
玄亀とアディはおかしな取り合わせである。
アディは鳶色のお下げに生き生きした膚、背が高いのに対して、玄亀は背が低く、黒髪、小さい下がり目、色黒の丸顔である。
二人が最初にしたことは、天井桶の栓を抜いて二人ともびしょ濡れになることだった。
それから真っ黒になって、泥饅頭を作った。
エマとエマのお母様、ライト夫人、ヴォルテ夫人などがみえた。
大鳥氏も来られたがとても丁寧で親切だった。
私たちが矢野やその手下に侮辱される危険を避けるために、なるべく早くこの家から引っ越すようにと云われた。
お陰で母は随分と元気づけられた。
村田氏も来て下さった。
いつものようにぶっきらぼうだが――薩摩の人は概してぶっきら棒だ――とても親切で、三田にある西洋館を貸して下さると仰った。
私は明朝未明に横浜から出帆する汽船に託して、作文をアメリカに送った。
七時半に使用人のキンが玄亀を迎えに来た。
玄亀は丁寧にお辞儀をして、忠僕の背に負ぶさって帰って行った。
キンは片手に坊ちゃまの下駄と風呂敷包みのお土産のお菓子とを持ち、お辞儀をしてから、坊ちゃまの方に後退りして背中に負い、人の良い笑みを浮かべて引き上げていった。
「クララたちが鳥居坂に引っ越したら私も一緒に暮らしてもいいかな?」
甥の玄亀を見送りながら、お逸はそう云った。