Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第48回解説

【クララの明治日記 超訳版解説第48回】
「遂に正式に父親ウイリアム氏が商法講習所――現在の一橋大学の原型――から解雇されてしまいました。
今回分は流石に落ち込み気味のクララとアンナ先生の姿が描かれています」
「確かに異国の地で一家の大黒柱が“無職”になるというのはとてつもなく心細いものでしょうね。
それにしても実の娘から『父は母と知り合って以来、いつも困難に出くわしているらしい。そして不思議にも父の味方になってくれる人はいつもいないのだ。』と書かれる父親も情けないことだとは思いませんか?」
「……確かに。実際クララの日記中でも全く影が薄いしね、偶に出て来ても邪魔者扱いみたいな表現だし。
でも6月3日付の日記でも分かるように、学生からは信望がそれなりにあったみたいよ。後に日銀第二代総裁となる富田氏だって、ただアメリカ留学時代の恩師だから、という理由だけで最初に講師として推薦したわけでもないでしょうし」
「後任者が酷すぎたこともあるのでしょうけれどね。日本でそれなりの事績を残した西洋人ならばほぼ網羅されている『来日西洋人名辞典』でも、ウイリアム氏の後を継いだというマイヤーズ氏についての記載が全くないところを見ると、クララの日記で描かれている通り、全く使えない講師だったのでしょう」
「事実この3年後に一度潰れてしまうのだけどね、この商法講習所は。うちの父様が“ホイットニー氏のために”と出資していた資金を引き揚げたことも遠因の一つだろうけど」
「一応公平を期すために云っておきますと、最大の原因は管轄していた東京府が予算停止をしたからですけれどもね。潰れるまで矢野氏も私財を投げ打って維持していたようですわよ?」
「でも後年のことを考えると“完全に矢野氏の私塾化していたから資金を注ぎ込んだ”とも考えられるんだけどね。実際復活し、東京商業学校と名を改めて再スタートを切った学校の校長としても十年以上君臨し、遂には学生の卒業許可も就職先も矢野氏個人の意思で左右されるという事態すら生じていたみたいだから」
「それで最後は学生全員に試験をボイコットされ追放、ということになりますのね。確かに、その辺の素養はクララの日記を読む範囲でも感じ取れますわ。
もっともクララの場合、フィルターがかかりまくっていますでしょうから、多少割り引いて考える必要はあると思いますけれど」
「ともあれ、これでホイットニー家と商法講習所の縁は完全に切れることになります。
この後、クララのお父様は津田仙氏が設立してくれた学校で教鞭を執ることになるものの、徐々に生活は苦しくなっていきますが、その辺のことは日記の続きで」
「さて、他の話題に移りましょうか。
杉田氏宅で発生した“医療事故”について、この明治もまだ11年の時代に既に検死らしきものが行われていることに素直に驚かされますわね。ちゃんと原因も突き止めているようですし、意外と侮れませんわね」
「現在放送中のTVドラマ“仁”における医療の世界観より“現実”の方は先を行ってたのかもね。確かに仁で描かれている時代からは二十年ほど経っているけど」
「さて、では今週分の最後に。今回ほんの一瞬だけ顔を出した森氏の長男、清君。当時三歳だけれど、実はこの子、この日記に頻繁に登場する“彼女”と“浅からぬ関係”になるんだよー」
「あ、浅からぬ関係……って、どなたとですの!?」
「天然お嬢様にして、徳川家斉の義理の孫“おやおさん”こと松平八百子さん……」
「!? おやおさんの方がずっと年上じゃありませんの!?」
「……の長女と結婚することになります。つまり、おやおさんにとって義理の息子だから“浅からぬ関係”だよね」
「そういうことですの、驚かすんじゃありませんことよ! ……って!? おやおさん、いま十四歳ですわよね!? しかも誕生日がまだ来てなければ十三歳!」
「うん、義理とはいえ、親子でたった十歳違いだったり。しかも自分が子供の頃から知っている幼子が、自分の“娘婿”になるっていうのは不思議な気持ちだっただろうね。
そんな感じで調べれば調べるほど、この時代の人の繋がりって面白いよねー」
「……そんな中、貴女に関する資料だけは殆どまったくもって見つからないのですけれどもね。どうして親子でこうも走らせる筆の量が違ったのか、不思議に思いますわよ!」
(終)


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