Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第54回−1

1878年8月13日 火曜日
ウィリイは石川県加賀郡金沢町にある啓明学校に教師として近く赴任する。
悲しいけど、お金がないのだから致し方ない。
家ではウィリイに依存している度合いが高いので、兄に行かれてしまうのはとても困る。
が、如何ともしがたい。六ヶ月行ったきりになる。
そして百三十ドルの給料の中からいくらか送ってくれるのだ。
梅太郎が今朝やって来た。
氷川様、つまり氷川神社の祭礼の行列が勝家の前を通るので、それを見に来るよう招待してくれた。
アディと私は梅太郎に着いて行き、母は後から来たのだけれど、母だけは気分が優れないのですぐ帰ってしまった。
岡田夫人――勝家の七郎を養子にして長屋に住んでおられる――のところに行ったのだけれど、家の中は既に日本人のお友達で一杯だった。
やがて行列――それは何台もの荷車から成っていた――がやって来た。
男の人が牛を引いており、大きな紙の花が飾ってあって、その一番上にきらびやかな弁天様や大蛇退治の英雄など、昔の英雄の人形が乗っている。
その周りを少年や大人の男性が喚きながらついていく。
でも、次に来た三人の踊り子の方が私はずっと面白かった。
三人は大勢の男が担いでいる大きな舞台の上にいたのだけれど、その舞台が私たちの窓の真ん前に下ろされたのだ。
一人の娘が真っ白く白粉を塗り、髷を高く結って美しい衣装を着たところは、人形そっくり。髪はものすごく高く結って、大きな簪や櫛をさしている。
扇の絵や絵本にある奇妙な絵にそっくりだ。
私はああいうのは日本の空想力を駆使して作った誇張された姿かといつも思っていた。
真ん中の子は男の衣装を着け、お面を被っていた。しかし丸ぽちゃの腕、ほっそりした姿、ぎこちない歩き方などから、この<釣狐奴>の性別は明らか。
もう一人の子はあまり綺麗ではなかった。けれど、見事な衣装をつけていた。
踊りは釣狐、つまり狐狩、という題で、なんともいえず荒っぽいが美しい場面で、現実というよりは荒唐無稽な子供の夢のよう。


舞台は先に進んでいき、勝婦人が通りかかった手品師を呼び止められた。
彼は僅かの報酬で、一時間おかしさと驚きを私たちに提供してくれた。
五つの球を同時に空中にさっと放り投げ、それを巧みにまた全部手に納めたけれど、空中が球だらけに見えた時があった。
球は生き物のように手品師の額や唇や首にくっついた。太鼓のばちでも同じ事をした。
それはまるで生き物のように動き、魔法にかけられたに違いないと思わせた。
次に水の入った茶碗を棒の先につけて、水を零さずにその茶碗を逆さまにした。
その他にも色々面白い手品があった。
例えば広げた傘の上に球やお金やお椀などを転がし、とても面白かった。
それに時々投入する滑稽な台詞がまた興味のあるものだった。
このあと軽業師が呼ばれたけれど、こちらの方はあまり面白くなかった。
それからお逸、おせき、およね、梅太郎、武夫、おあさ、おたか、こまつ、おゆめ、それに私とアディが揃って日本で一番古い踊りである「お神楽」を見に近くのお社へ行った。それは古い歴史を無言劇で見せるもので、お面やかつらはとても滑稽である。
ウィリイが真珠の勿忘草の象嵌のある青いロケットを<私のお誕生祝い>にくれた。
でも、ウィリイはもうじき行ってしまう――悲しいことに。