Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第54回−2

1878年8月14日 水曜日
みんなでウィリイを見送りに行く支度をした。
母と私はついでの用事で横浜に行くことになっていた。盛、雄、小鹿さん、疋田氏など皆さん駅に来られた。笠原が付き添っていくことになっている。
家を出る直前に富田氏からの手紙が来た。
「えっ!? 富田氏のお蔵に泥棒が入って、私たちのものを盗んだですって!?」
まあ、大変! あの中に私たちの一番良い冬物が全部入っているというのに!
それから色々の方から頂いた贈り物の骨董品も!
でも、今はウィリイの見送りが先だ。
私は後ろ髪を引かれながらも横浜へと出かけた。
不安を抱えながらも横浜への旅は楽しかった――これから長いこと一緒に旅行することはないのだと分かってはいたけれど。
六ヶ月は決してそれほど長い期間ではない。だけど、私たちには六年のように思える。
古い歌の文句が思い出されて仕方がない――
『いく年の 別れとなるやもしれず 永遠の別れとなるやも』
どうかこの別れが「永遠」になりませんように。
私たちはフランス人のレストランで昼食をした。
素晴らしい夕食だった。
ウィリイは駅まで私たちを送ってきてくれて、キスをして「さよなら」を云うと駆け出していった。船がすぐに出るのだ。
そしてまたしてもあの歌の文句――あんな歌覚えなければよかった――が人の声のようにはっきり聞こえてきた。
帰路は久々に中原氏が同じ汽車だったけれど、私たちを退屈な人だと思ったであろう。
私たちの心は「さまよえるウィリイ」の上を彷徨っていたのだ。
父なる神様、どうかウィリイを守り、再び愛する人々の元にお帰し下さいますように。
横浜から帰ってから富田家にトランクを調べに行ったら、何もかも放り出してはあったが、なくなっていたのは、灰色の紗のスカートだけだった。
泥棒は富田氏の金の柄の刀や、正装の帽章や、父親が娘のために苦労して買った結婚衣装などを盗んだ。