Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第62回解説

【クララの明治日記 超訳版解説第62回】
「突然だけど、今回分の内容とは全く関係ない解説してもいい?」
「なんですの、いきなり? 今回分は確かに特に説明を要するところもありませんけれど」
「先日久々に本屋に出かけたら『江戸奇人伝−旗本・川路家の人びと』という本を見つけ、パラパラパラとページを捲っていたら、突然クララの名前が出て来たので買ってきたのよ、中身mよく確かめずに」
「資料オタクの見本のような買い方ですわね……。
それにしても、タイトル通りならば何故クララが関係ありますの?」
「いきなり結論だと訳が分からないから順番にね。
今回の11月18日の日記の最後にも出てくるけれど、夫妻揃ってのクララの友人に村田一郎氏がみえるでしょ?」
「ええ、後に製紙業を興して、現在の王子製紙の前身の一つの会社の社長として収まった方ですわね。
男爵となった氏が晩年になって建築した邸宅が鎌倉市指定景観重要建築物として指定され、現在も残っていて「かいひん荘鎌倉」という名前で現在も宿として営業しているという」
「うん、そう。で、クララが村田氏の結婚式に出席した詳細な記録も紹介したよね?」
超訳日記としては第43回、1878年3月12日火曜日の記述ですわね」
「で、その中に“川路氏”という方が村田氏の友人として出て来たでしょう?」
「ええ、確か村田氏の結婚式で仲人みたいな役所を努めていた方で、当時の日本警察のトップ、大警視でしたっけ、薩摩藩出身の?」
「村田氏が薩摩藩出身だから、当然そう思った訳よ、私は。
それがどうにも冒頭に上げた本の分析によると、この“川路氏”は幕臣の川路氏と考えた方が良さそうなの。
メイ、川路聖謨(としあきら)って、人の名前、聞いたことがある?」
「名前だけは聞き覚えがありますわね。日露和親条約締結担当者で、確か最期は……」
「父親は最初浪人から身を起こして、幼い息子に教育を授け、その息子、つまり聖謨氏が養子に入った先も“お目見え”以下の下級旗本の家だったにもかかわらず、その有能さからトントン拍子に出世し、遂には勘定奉行外国奉行などを歴任。
条約締結交渉窓口となった際にはロシア側から“ヨーロッパでも珍しいほどのウィットと知性を備えた人物であった”と評されるくらい有能で洒落や機微にも飛んでいて、氏が詳細に残した日記や手紙のお陰で幕末期の様子が手に取るように分かるの。
苦労人のせいか、随分と家族思いの方でね、手紙や本を元にした前述の本からも川路家の家族関係が本当に目に浮かぶくらい鮮明に」
「それでこの方、確か最期は、薩長軍の江戸総攻撃の予定日に……」
「で、この聖謨氏が頻繁に手紙や日記に書き記している、早世した長男の息子に太郎ちゃんという子がいて、この子を本当に可愛がっていたのだけれど」
「だから、ご当人は江戸城開城を知っていたかどうかは歴史の謎になってしまったけれど、病で半身不随となっていたためか、最期はピストルで喉を……」
「で、孫の太郎ちゃんは川路寛堂と名を改め、明治維新後には岩倉欧米派遣使節団に書記官として参加。クララの日記で云う“ワシントンへの全権大使の一行に加わっておられたこともある”というのはこの事だと考えると、薩摩藩の川路氏より、こちらの幕臣の川路氏の方がしっくりくるわけ、確かに」
「話を逸らすほどのことでもないでしょうに! 別段貴女の父上と対立していたわけじゃないのだから。確かに、幕府に殉じて壮絶な最期を遂げたこの方と対比されることが多いのでしょうけれども」
「……うん、それは確かにそうなんだけど、ちょっと寝覚めが悪くて」
「辞世の句の横に“徳川家譜代之陪臣頑民斎川路聖謨”とまで書き記しているのだから、死すべき時に死んだのよ、この方は。そしてそれによって永遠に歴史に名を残すことになったのだから。
ともあれ、では村田氏の仲人は同じ薩摩藩川路利良氏ではなく、旧幕臣の川路寛堂氏、ということで最終的な結論にして良いですわね?」
「多分それでいいと思う。村田氏や富田氏との面識が出来たのは、多分岩倉使節団の訪米の時ね。二人ともアメリカ留学経験があるから。
ただこの川路氏、この後は明治政府での出世コースから外れてしまい、長生きはしたものの回ってくる役職は各地の女子校の校長先生くらいで“後世に残して意味のある仕事は祖父の伝記くらいであった”と後に詩人兼美術評論家として名を上げる実の息子にまで書かれるくらいな一生だったらしいわ」
「……なんというか、祖父とは本当に対照的ですわね、本当に」
「でも、一人の人間としては本当に“いい人“で機微にも富んだ人だったとは思うよ。
村田氏の結婚式からクララが帰ろうとした時、川路氏は松のお菓子を渡しながらこう云っているわ。
“あなたが結婚なさる時は、この常緑の松葉のように、しっかりと結ばれますように”
初対面の外国人の女の子に、こんなことをサラリと云えるんだから!」
「だけど、クララにとってはこの川路氏の助言も無駄になってしまいますけれどもね」
「ああ、云ってはいけないことを!」
(終)


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