Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第64回解説

【クララの明治日記 超訳版解説第64回】
『神様がノアに命じて箱船を造らせた窓は、明かりを採るためではなく、悪人の溺れる様を見るためのものである』
「……牧師がこの発言とは、流石にげんなり致しますわね、同じキリスト教徒としては」
「何処かの天空の浮城の名悪役並みだよねぇ、この牧師の信仰の中の“神様像”って、
溺れて悶えて苦しんで、汚泥の中に次々と沈んでいく人たちを笑いながら見つめて
『ハッハッハッ、見ろ、悪人がゴミのようだ!』とかやるのが“正しい姿”なんだ」
あと考えてみると、ノアの箱船の話って“悪人”だけじゃなくて“何の罪もない動物”も大量虐殺してるんだよね、“一つがい”以外。
メイ、牧師の娘として、そこのところ、どうなの?」
「どうなの? と云われましても、わたくしに答えがないのを分かっているでしょうに!
牧師の娘としてではなく、わたくし個人の意見を言っても仕方ないのですから」
「まだまだ突っ込みたいところなんだけど、メイが涙目なんでこの話題はこの辺で」
「誰も涙目になんてなってないですわ!」
「さて、話変わって大山巌夫人のことだけど……って、その前にごく簡潔にご主人の大山巌の業績を一行でいうとこんな感じ。
“明治陸軍の育ての親にして、日露戦争では陸軍元帥として活躍。西郷隆盛の従兄弟”」
wikiを読むと、典型的な薩長出身軍人の在り方ですわね。同じく従兄弟である西郷従道と同じく、政治には殆ど関心を示さなかったところが、同じ陸軍出身の山県有朋などとは違いますわね」
「で、ここでちょっとだけ余談、いい?」
「ちょっとだけですわよ、貴女の話は長いんですから」
「後の大山巌元帥は岩倉使節団と共にスイスに滞在中、とあるロシア人からフランス語を学び、同時にそのロシア人に日本語を教えているの。まあ、実際には圧倒的に教わるばかりだったようだけど。
その後、このロシア人は、大山巌に、ひいては西郷隆盛に招聘され来日し、現在でいう東京外国語大学で教鞭を執ることになるわ。
和服が似合うかなりの親日家だったのだけど体調の悪化のため、滞在二年強、明治8年の末には離日しちゃうんだけどね。でも一応、辛うじてクララが来日した直後、三ヶ月くらいは日本滞在期間が重なっているのかな?
彼の経歴をざっと説明すると、文豪トルストイの傑作小説『イワン・イリイッチの死』の主人公であるイワン・イリイッチ・メーチニコフの弟であると同時に、細胞の研究の末に『不老長寿論』なる論文を書き、ノーベル生物学賞を受賞したイリヤ・メーチニコフの兄なのね。
ちなみに、ブルガリアヨーグルトを“不老長寿食”として世界中に広めたのもこの弟さんだから、ヨーグルト好きの人はこの人に足を向けて寝られなかったり。
まあ、弟さん本人はロ●コンの気が激しくあったみたいだけど、業績には一切関係ないから、無視の方向で。二人目の奥様とは仲睦まじく最後まで添い遂げてるし。もっとも彼女が16歳の頃に強引に家庭教師として売り込む、なんて素敵な出会いだったりするけど。日本ではこういうのを“光源氏計画”と云うんだよ。ちなみに一人目の奥様とは、当時の彼の教授の娘さん(注.当時13歳)にフられたところを慰めて貰ったのがきっかけで結婚しているから、多少症状はマシ、になったと云えるのかな? 三歳上までストライクゾーンが上がってるから。
で、この人、御本人はといえば、十数カ国語を自在に操り、貴族階級の実家を飛び出した後はイタリア統一戦争に参戦。ガルバルディの下、ヨーロッパ各地から集まってきている軍の連携を図るのに奮闘。激戦の最中に片足を失い、入院しているところに『三銃士』のデュマが『あなたをモデルにした小説を書かせてくれ』と取材を申し込んだにもかかわらず、言下に拒絶。その後は各地の大物革命家たちとも接触し、ロシア内務省から危険人物扱いされていた義足の革命家、それがレフ・イリイッチ・メーチニコフで、離日後も……」
「五月蠅い、黙れっ!」
「えー、これからがクライマックスなのにぃ〜」
「あなたの三文小説に登場予定のキャラ紹介を延々と続けるんじゃありませんことよ!」
「でもでも、概ね全部事実なところがサイコーなんだけどなあ。
あ、今ふと思ったんだけど、この人と高木氏と対決させてみると面白いかも?」
『歴戦の勇士である義足の革命家(表向き:東京外国語大学前身で講師)
VS服部半蔵末裔にて最後の新撰組隊士(表向き:一橋大学前身で講師)』
聞いただけで、ワクワクしない?」
「そんな妄想でワクワクできるのは、この世の中で貴女だけです!」
「とまあ、大山夫人の旦那様は、こんな危険人物をお雇い外国人として招聘していたわけで」
「当時の日本政府の危機意識のなさが露呈しますわね。
もっとも、ロシア政府がご丁寧に『貴国が雇い入れたのは危険人物ですよ』と教えてくれるわけもありませんし、国際情勢の裏側に無知だったのは致し方ないところもあるでしょうね。ロシア政府としては、かの人物が遙か彼方の国にいてくれる分には問題ないわけですし」
「もっともその判断が後の歴史に大きく関わってくるんだな。
後の大山巌元帥に、祖国であると同時に激しい憎悪を抱き、生涯戦い続けたロシア帝国についてレフ・イリイッチ・メーチニコフが何を吹き込んだのか。そこのところがね」
「随分な歴史の皮肉ですわね。いえ、この場合は“王道”で、弟子が師に代わって仇を取った、とも云えるのかしら?」
「というわけで、忠臣蔵の話なんだけど」
「本当に強引な切り返しですわね」
「クララ、完璧に日本人化してるわよね、芝居の盛り上がりどころとか完璧に抑えている感じで」
「少なくとも、現代の日本人よりは当時の日本人に近くなっていますわね。
ここまで詳しく芝居の内容が書けると云うことは、お芝居での台詞もまず大半は理解していたのでしょうし」
「でも是々非々みたいだけどね。そこのところは来週の、牛雅楽稽古所開会式に招かれたときの話でどうぞ」
(終)


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