Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第67回−3

1879年元旦 新年おめでとう 木曜日
美しい朝日の輝きとともに新年はやって来た。
これほどよく晴れた美しい元旦は初めてだ。
目を覚まして霜の降りた地面や、澄み渡った青空――それは日本の空でもなく、ヨーロッパの空でもなく、アメリカの空でもなく、普遍的な空であって、銀色に輝く富士山がくっきり浮かんでいたが――それを眺めた時に、私は喜びを抑えきれず、神の中の神、光の中の光、卑しい賤女を蔑まれることのない神を讃える歌を歌った。
朝食とお祈りをすませてから勝氏の家に新年のご挨拶に出かけた。
しかし、あちらはまだ支度ができあがる前だった。
七郎は早くから身支度ができていたが、おせきは縮緬の着物や一番上等な簪を並べるところだったし、他の方たちもまだ支度ができていなかった。
やがてお母様が皆さんに「支度をするように」と仰ったので私は帰ってきた。
間もなく梅太郎が、つるつるに磨いた顔に、五つの紋を染め抜いた灰色と黒の着物を何枚か着て、その上に茶色の袴をきりっとつけ、真新しい下駄を履き、手袋をはめて父上の家から出て来た。
もう、すっかり一人前の紳士のようだ。
紋付きの袖に通した腕を組み、十六歳の青年にできる最上の威厳のある足取りで、いつも寝起きしている姉上のお夢さんの家に行き、恭しく案内を請うた。
家に招じ入れられると、初めて上がった家であるかのように、畳の上にサムライのように厳かに坐った。
老婦人と娘さんがかまぼこなどを載せた新年のテーブルを持ちだして来て、まるで王子様にするように、お坊ちゃまに深々と頭を下げ、新年の挨拶をした。
お坊ちゃまはこれに対する返礼の挨拶をし、同じように深く頭を下げた。
これは私たちには非常に不思議に思われた。
何故って、梅太郎はいつもこの家で寝起きしているのだから。
一日中私たちのところにも来客があり、ありったけの茶菓を出してもてなした。
屋敷内の婦人たちはみんな訪ねて来て「おめでとうございます」と挨拶した。
お輝としげのは素晴らしい衣装で来て、一日中アディと遊んでいった。
私は今はじめて、疋田氏の父上が旗本の本田公であり、疋田氏も殿様であることを知った。
それだからお輝も大名の家族らしい衣装を着けても構わないのだ。
同じく疋田家の玄亀は可哀想に風邪をひいて、折角の祝日を床の中で過ごさなければならない。
おせきは豪華な衣装であったけれど、羽根をついている間に鼈甲の簪が落ちて壊れてしまった。
お逸もすっかり美しい衣装だった。
女の使用人たちさえ今日は淑女のように見えた。
うちのタケまで新しい着物を着て気取っていた。
高木氏もみえたが、私たちに散々からかわれた。
お酒を相当飲んで来られたので、羽根つきをさせられ、失敗するたびに顔に隅を塗られたのだ。