Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第72回−3

1879年3月16日 日曜日 
昼食後、私はショー先生の日曜学校に行った。
夫人が私に担当させて下さったのは、六人の面白い女の子のクラスだった。
私が一番気に入ったおてるちゃんは十二歳で、杉田家の近くに住んでいる。
頭髪がまったくないので奇妙な感じである。
おふゆちゃんは大きな澄んだ黒い眼を持った綺麗な子。
おけいちゃんは小綺麗な、可愛いらしいはにかみや。
他の子たちも丸い眼にふっくらした頬をして、額にお下げ髪を垂らし、いつでもにっこりする小さい口を持っている。
この子たちは面白いのみならず、有望な畑である。
私はまず名前や年齢、住所を聞き、私自身のことも少し話した。
日本語で教えるよりも、会話をする方が楽だが、教えるのも上手になりたい。
家に帰ってから、またヤマト屋敷に行った母を迎えに行った。
途中に数人の子供たちが立っていた。
「あ、異人だ!」
一人の女の子が、いつもの日本人の子供達の反応通り、そう私を呼んだ。
私が振り返って彼女の顔をじっと見ると、何か感ずるところがあったのだろう、彼女は調子を変えて「どこへ行くの?」ときいてきた。
「市兵衛町よ」
「一緒に行ってもいい?」
「いいわよ」
私がそう答えると、少女はおのおの背中に赤ん坊をおぶっている子供を二、三人誘い、私の後から笑いながらついてきた。
名前を聞くと「おとく」と云った。
次の女の子は「おいつ」、向こうの男の子は「次郎」という名前だった。
背中の赤ん坊はそれぞれ妹や弟で、子供は十二歳から十歳という年齢である。
私の名前、年齢、住所あたりまでは普通だったけれど、いろいろ妙な質問をされた。
「そのオーバーについている毛皮は何の毛皮?」
「首に巻いているのは襟巻きなの?」
「お姉さんの足、小さいね」
「その帽子、とっても綺麗」
好きずきにそんなことを云って、最後にこういった。
「お姉さんは“良い異人”だね」
私はいつになく機嫌がよかったので、この子供たちと話をして面白かった。
通りがかりの謹厳なサムライたちが、私たちのやり取りをおかしそうに見ていた。
丘の上まで来た時に「もうお帰りなさい」と子供たちに云った。
「えー、もっと一緒にいきたい!」
おいつという子は最後までそう云っていたけれど、私は「モウタクサン」と断った。
しかし丁寧な口調で断ったからだろう、子供たちはお辞儀をちゃんとした。
「また来てねー」
そう誘われたけれども、余程機嫌の良い時にだけ行くことにした方がいいだろう。
機嫌の悪い時はうるさい子供に後をつけられるほど腹立たしいことはないからだ。
晩にはとても良い集会が持てた。
津田氏が学生を三人連れて来られたが、この学生たちはクリスチャンである。
ディクソン氏もみえた。
「日曜日に科学の本を読んでもよいものだろうか?」
津田氏の質問に対し、ディクソン氏はこう応えた。
「それは個人の良心の問題です」