Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第73回−1

1879年3月30日 日曜日
夕べの風は本当にすさまじかった。
今にも家が倒れるかと思ったくらいだ。
みんな心配で眠れず、寝巻きのまま蝋燭を持って廊下や階段をうろうろした。
使用人頭の田中は家に泊まらず、佐藤氏のところに行っていた。
家が倒れた時には外にいた方が私たちを助け出せると思ったのかもしれない。
午前一時に二階の窓から火事が見えた。
黒い夜空に不気味な赤い炎が氷川神社の後ろあたり<と思えたのだが>から燃え上がった。
「青山に違いない」
使用人のシュウはそう云った。
明け方に雨が降り出し、教会に出かける頃まで降り続いた。
しかし、その頃になってからりと晴れ渡った。
ベインフリッジ氏が「キリストに内在する宝」について立派な説教をなさった。
長いけれども感慨深い説教だった。
彼は新顔であるが、宣教活動を視察しに日本に寄ったということだ。
家に帰ってから梅太郎、七郎、田中を相手にキリストの最後の晩餐の話をした。
「ナルホド」
初めてこの話を聞いた田中はしきりに感心していた。
ショー夫人のところへ行き日曜学校の始まる時間まで夫人とお話をした。
私の受け持ったクラスは面白いクラスだったが、能力が揃わず進んでいる人とそうでない人が混ざっている。
昼間はずっと忙しいので晩に津田氏が四人の学生を連れて来られた。
勝家からも四、五人がみえた。
「ラザロの甦り」について話し合った。
津田氏はご自分で説明したりお祈りをしたりなさる。
それから中島氏が愛について述べているコリント前書十三章を読まれた。
中島氏は熱心に祈祷もなさった。
この集会がみんなのためになりますように。
内田夫人はよく分かったので今までのうちで一番良い会だったと云った。
何か特に感心することがあると彼女は会の途中でも「なるほど」と声に出して云う。
済んでからお茶とお菓子とジャムをつけたパンをお出ししたが、喜ばれた。
津田氏はひどく謹厳であるかと思うと急に陽気になる。
「文明に触れる前はシャツを着ないで風邪をひかなかったが、今ではシャツを着ないと風邪をひく。
昔は靴でなく下駄を履いていたが、今では下駄を履くと転んでしまう。
昔は帽子をかぶらなかったが、今では帽子を忘れると頭痛がする。
これが進歩なのでしょうが、私には不便なことです」。
すると一人の学生がツッコミを入れて一言。
「先生、それは違います! 
帽子をかぶらないと頭痛がするのは進歩のせいではなく、先生は髪の毛がおありにならないからですよ!」
もうみな大笑い。
それからお辞儀をして先生と一緒に帰って行った。