Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第74回−2

1879年4月6日 日曜日 
今日は安息日なのに忙しかった。
日曜学校に行く途中、ヤマト屋敷に寄ったが、ド・ボワンヴィル夫人は、歯痛で駄目だった。
日曜学校ではマクラレン氏がハガル、つまりアブラハムの妾、イシマエルの母の話をした。
フレッド・ブリンドリーがとても熱心に聞いている様子なので、先生は主にそちらに向けて喋っていた。
そのうちフレッドに対して質問をしたが、期待した答えは返ってこない。
質問を繰り返すと、不自然に大きな声で「先生、すいません、風邪で耳が」と云い、また先生は声を大きくして繰り返したが、やがてぽかんとした顔をしているので、先生の顔が赤くなってきた。
男の子たちはくすくす笑い出し、とうとうジョージが云った。
「先生! フレッドは風邪で耳が聞こえてないんです!」
とてもおかしかったが、アニーは訳が分からなかったので笑わなかった。
私もマクラレン氏が気の毒で、笑うのを我慢した。
夕方家に戻ると、母は津田氏の家に行くことに決めたというので、軽い夕食の後、田中と梅太郎をつれ、今度は人力車で行った。
少し早かったので、まだ来ている人は少なかった。
母は中島氏と話をし、私は津田夫人とおふきと話をし、小さいおふきと仲良しになった。
そのうち津田氏が入ってきて「友人の結婚式に行っていたものだから」と詫びた。
新郎は津田氏と同年の初婚で、新婦はなんと三十六だそうだ。
新郎は面白い経歴の人だ。
かつては大きい裕福な寺の住職で信仰心も篤かったのだが、中村正直氏の書いたものを読んで、キリスト教に改宗したのだ。
そして「仏教を捨てた以上、それによって得たものは、身一つ以外は何物もとるべきでない」と云って、その昔自分のものだった粗末な服だけを着て寺を出たのだった。
「自分は学問と身体だけで再出発するのだから世間的に見れば貧乏だが、キリストのためなら全てを投げうつ価値がある」
そう云っているそうだ。
これこそ一時の楽しみよりは神の苦しみをわかちあうことを選んだ人だ。
何と素晴らしい模範だろう!
津田氏は『東京新報』の記事も訳してくださった。
日本は今文明開化を行っているが、必要なのは文明だけではない。
人はパンのみにて生くるにあらず、水も茶も必要だが、飲み物だけでも生きられない。
同様に、文明のみでは日本は完全になれない。
破滅を避けるにはそれと同時に信仰が必要なのだ。
それから祈りの力を教えてくれるドイツの話を引用してあった。