Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第75回−1

1879年4月13日 日曜日 
復活祭。
外は雨で陰鬱だが、私たちの心の中は、その昔の神のしもべのユダヤ人のように明るい。
母は出かけられないので、ド・ボワンヴィル夫人と芝教会へ行った。
今日は家の者は誰も築地へ行かなかった。
礼拝の出席者は多く、ユニオン教会から来ている人も幾人かいた。
説教はショー氏で、復活にちなんだ良い話をなさった。
だが一番素晴らしかったのは、私が初めて参加した聖餐式だった。
四人ずつ祭壇に跪いて聖体を受けるのだが、ショー氏は真剣でとても厳かな式だった。
ド・ボワンヴィル夫人、ミス・ワシントン、私、ディクソン氏、それにもう一人知らない人が一緒に跪いた。
午後は母の痛みを和らげるために、背中をさすってあげるのに忙しかった。
その後、ひどい雨と寒さの中を芝に行くには行ったが、いつものように日曜学校で教えることはしなかった。
私の生徒が三人いたが、この前の日曜に習ったことをよく覚えていたようだ。
お互いに段々気心が知れて、少しずつ面白くなってきている。
天気が悪いので、夜の会に津田氏の生徒が来るとは思わなかった。
が、賛美歌を歌っていると時間通り七時に津田氏が入って来た。
勝家からは三人、夕食に来ると約束していらした松平氏もみえたので、大勢になった。
初めのうちは恥ずかしがって、母がちょっと喋ると、あとはシーンとしてしまった。
「何か云うことはありませんか?」
津田氏もそのたびにそう聞くと、やっと一人が手を挙げた。
「先生、思っていることがあるのですが、話してもよろしいでしょうか?」
彼はそう云って、信仰についてたとえ話をした。
「銀座で勤めていた時、おじいさんが、砂糖の作り方を是非知りたいと云ってきたことがあります。
それでその製法の出ている本を買って、一緒に砂糖を作ってみました。
ところが長い時間かかってやっと出来上がったのは砂糖ではなくて、薄いシロップでした。
おじいさんはひどくがっかりして、この本は間違っているからもう駄目だ、と諦めてしまいました。
今年になってたまたま本を手に取ったので製法をもう一度みてみましたら、一番大切なものを抜かしてしまったことに気付きました。
それでもう一度おじいさんを呼んでやってみたら、今度はちゃんとしたものができました。
これは聖書を読む場合も同じです。
すっかり分かったと思っても、よく読んでみると一番大切なこと、つまり聖霊ということをおざなりにしていたことに気づきます」
この学生はもう一つ話をしたが、私には曖昧ではっきり分からなかった。
「科学のみで宗教のない日本は、片方の車輪しかない人力車のようなものです。
宗教があってはじめて科学は、日本を真の文明へまっすぐ導いてくれるでしょう」
津田氏はそう締めくくった。