Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第75回−3

1879年4月16日 水曜日  
母のアンマには、家の者も興味を持っている。
勝家の人たちが上手だと云っていつも呼ぶ目の不自由な男の人だ。
頭を剃り、落ちくぼんだ目を閉じていて、見た感じは悪くない。
いつも風邪をひいているような、低いかすれ声でしゃべる。
昨日門を入ってきたら、ヨシとコマの二匹の犬が、頬を頼りに道を歩いている怪しげな奴だとばかりに吠えかかった。
按摩さんの方は、獰猛な犬が何匹いるかも分からないので、大声をあげて立ち止まり、頭の上で杖を振り回して飛びはねていた。
シュウが急いで飛び出し、犬を追い払い、ペコペコ頭を下げてあやまり、按摩さんを中に入れた。
治療を始めると、猫がじゃれて飛びついたので、また吃驚してしまった。
「按摩さん、猫は好きですか?」
私が聞くと「はい、いま飛びついてきたのは猫でしょうか、犬でしょうか」と頭を低く下げながら云った。
犬だと思ったようだが「猫ですよ」と云うとおかしがっていた。
もう十四年も按摩をしているという。
いつも明るく笑ってはいるが、味気ない暮らしだろう。
この忍従の態度を取らせるものが、キリスト教ではないのなら一体なんなのだろう?
治療中、患者を手荒く殴るようにするが、とても気持ちがいい。
指はしなやかで柔らかく、やさしい感触だ。
頭に手拭いをかけ妙な揉み方をするが、やはりいい気持ちだ。
関節を鳴らしたり、耳に小指を入れポンと引き抜いたりするが、こちらはどうも厭な気分のようだ。
だけど、肩から下に向かって手を震わせるようにして揉みおろすのはとても効果がある。