Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第75回−4

1879年4月17日 木曜日
屋敷の周りを散歩していると、いろいろなひとに会いお喋りするようになる。
特にお年寄りには愛想よくするように努めている。
勝家の岡田夫人<御隠居様>に出会うと、二人同時に「毎日よいお天気で」とか「昨日は寒うございました」などと挨拶をかわすことになる。
「お母様は如何でいらっしゃいますか?」
「お陰様で大分よろしゅうございます。もうほとんどよくなりました」
「まあ、そんなにお早く。私が玄関の敷石を踏み外しました時に、何週間も寝ておりました。
もっとも年寄りは治るのに時間がかかるものですけれど」
「母は按摩がとてもよかったと申しております」
「おや、日本の按摩がお好きでいらっしゃいますか。
針を是非なさるとよろしゅうございますよ。痛みには針ほど効くものはございませんから」
「それはなんでございましょう?」
「針でございますか? 長い金の針を按摩さんが打ってくれるんでございます。本当に気持ちがようございますよ」
「まあ! 我慢できないほど痛くはないのですか」
「いいえ、ちっとも。全然感じません。
肩胛骨の丁度真下を深く刺しまして、ちょっと骨を掠めますと、とても気持ちよくなりませんです」
私は感謝したが「母にさせます」とは約束できなかった。
話題を変えるため、私は桃色の美しい花を一杯つけた大きな海棠の木を褒めた。
「でございましょう? この椿が大きくなったら庭の模様替えをするつもりでしてね」
御隠居様は喜んで滔々と庭の未来図を説明なさった。
まるでこれから何年も生きているような口振りだ。
……もう片足を墓に突っ込んでいるというのに。
按摩さんには今日聖書や神の話をしてあげた。
初めて聞いたので「セイショ、セイショ」と何度もつぶやいていた。
天地創造や、キリストの行った奇跡について話すと、驚いて「へえー、なるほど」と云った。
特にベテシダの霊泉の奇跡(ルカ伝九・十)に感銘を受けたようだった。
どうかこれを機会に神の道に入ってくれますように。
午後にフェノロサ夫人がみえた。
とても美しい方だが無神論者だ。