Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第76回−5

1879年4月26日 土曜日
今日はとても気持ちの良い日だったので朝早く図書クラブに行った。
あまり早かったので、アンダーソン夫人はまだ来ていず、ピーコックとウッドが面倒みてくれた。
それから築地へ行き、ミス・スペンサーを訪ねた。
さも物憂げに、言葉を引っ張ってダラダラと喋る変な癖のある人だが、ウッドの訛りよりはましだ。
このところ日曜日は忙しくて暇がない。
というわけで、ミス・ギューリックが二、三週間オルガンを引き受けると約束して下さった。
買い物をして家に帰り、お昼を食べるか食べないうちに村田夫人がみえた。
買ってきたフランスのキャンデーを食べながら、午後は借りてきた本を静かに読もうと思ったが、それはすっかり諦めた。
階段を直している最中なので、家の中はもう目茶苦茶。
私のためにつけた急拵えの階段を上ったが、荷物は持っているし、裾は引っかかるしで一苦労。
村田夫人は愛情溢れんばかりで、一緒に庭を散歩した。
「中に入りましょう」
お逸のいる門の前を通りかかった時にそう云うので一緒に行くと、お逸は家の人に囲まれて先生に教えられながら花を活けていた。
「あら? おひささん(村田夫人のことだ)、中に入られませんか?」
お逸にそう勧められたが、縁側でお喋りをしたり、アカとコマが私の愛猫トラノスケとじゃれあっているのを見て笑ったりした。
年寄りのお師匠様はとても陽気で、こんな童謡を繰り返して歌った。
「いぬ ワンワン、ねこ ニャーニャー、きじ ケンケン、うさぎ、――、うま ヒンヒン、
[合唱]ワンワン ニャーニャー、ケンケン うま ヒンヒン」
とてもおどけた口調と表情で歌うので、みんな大笑いをした。
「ごめんくださいませ」
おひささんが今度はこんなことを云ってお逸の髪をとかしはじめた。
「どういたしまして。こんな汚い髪でよろしかったらいくらでもどうぞ」
帰るときになって、おひささんは頭を深々と下げて云った。
「ご馳走になり大変有り難うございました、結構なお庭を拝見させて頂きまして」
「庭だなんて、雑草だらけの原っぱのようなものでございます」
若いホステス役のお逸は馬鹿丁寧に返した。
「お逸とおひささんのこんな丁寧な話し方は聞いたことがありません」
私はおかしくなって笑いながら云った。
おひささんはそれからなおしばらく私のところにいて、お喋りをしたり、刺繍をした美しい長襦袢を見せびらかしたりして、とてもよい一日だった。