Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第77回−1

1879年4月29日 火曜日
昨日、杉田夫人と武さんが来て、皇后陛下のハンカチ<ただし未使用!>を下さった。
杉田先生が皇后様の叔母様から沢山頂いたそうだ。
今朝ベイリー夫人に会いに行った。
もうじき、いなくなるのは大変残念だ。とてもよい方だったのに。
昨日、皇后陛下に拝謁したばかりで、その様子を生き生きと話して下さった。
サットン夫人と一緒に、入口に簾のかかった小さな応接間に通された。
皇后様は皇太后とともに右手の小さなテーブルの後ろに坐られ、女官たちが戸口の真正面、海軍将校たちが左手に立っていた。
ベイリー夫人はあんまり大勢いるのですっかりまごついてしまい、どれが皇后陛下か教えられてはじめてお辞儀をしたそうだ。
「そしたらその女の方が何かモソモソ云われたけれど、誰にも分からなかったと思うわ。
でも、服部潜蔵氏は『皇后陛下は初めて敢えて嬉しい。よろしくと仰せです』と云うの。
それから後退りで退出したけれど、部屋は小さいし、長い裾は邪魔だしで、ひどく苦労したわ。
で、やっと出たと思ったら、服部氏が急いで出て来て、訳を間違えたと云うのよ。
皇后陛下は良い船旅をと仰せられました』ですって」
ご主人のベイリー氏も同時に天皇陛下に拝謁なさった。
「陛下は立ち上がると、聞き取りにくい無愛想な声で、短いスピーチを読まれるんですがね、まず分かる人はいませんね。
あんな奇妙な声は聞いたことがありませんよ。芝居がかって不自然なんです。
とにかく何を云われたのか分からないので、お辞儀だけして、
『御言葉まことに有り難く存じます』といって退出しましたよ」
あとそれから、とベイリー氏は容赦なく付け加える。
「皇后様や宮様方の履いていた編み上げ靴は、まるで泥棒横町で売っている中古品のような、粗末な牛革の不格好な代物でしてね、およそ高貴の生まれの方々にはふさわしくない代物でした」
ベイリー氏が、靴のことやドタバタした歩きぶりを説明するのを聞いていると面白かった。


帰り道、氷川様の境内をしばらく散歩した。
今日は非常に静かでうららかだった。
午後ド・ボワンヴィル夫人とテニスに行った。
だがミス・ワシントンの婚約者のユーイング氏が横浜に、多分嫁入り道具を買いに行ったらしく、テニスは出来なかった。
天国の素晴らしさを子供にどう教えたら一番良いか、サイル博士と話し合った。
博士は頭がとてもよく、真面目な話を聞くのが私は大好きだ。冗談もよく仰る。
「東京に今残っている若い女の子は君とミス・ピットマンだけだね。今度は君の世話をしなくちゃ。
さてと、君がいいと思っている人はいないかね?」
「いません」
私は吃驚して云った。
「それじゃ見つけてあげなくちゃ。
目は青くて、背が高く、髪は金髪のちぢれ毛で、それに一番大切なのはイギリス人ってことだね。
こんなところで気に入るかな?」
「最後の条件はとんでもありませんわ。
イギリス人は絶対駄目です! アメリカ人と結婚します!」
「ああ、その話は分かってますよ。何度も聞いてますからね。
だけどたちまち売れてしまうところを見ると、イギリス男性はとてもいいってことですよ」
「それはイギリス女性よりアメリカ女性の方がずっといいってことの証明に過ぎませんわ」
そう切り返したのは、ミス・ピットマンだった。
とても面白かったので帰りにド・ボワンヴィル夫人に尾鰭をつけて話してあげた。
家に着いたら、母は開拓使に行って、庭に植えるととても綺麗な花や木を買ってきていた。