Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第83回解説

【クララの明治日記 超訳版解説第83回】
「今回は何と云っても、グラント将軍の歓迎会の話ですわね」
「丁度独立記念日に来日し、そのまま歓迎会を開くなんて如何にもアメリカ人らしいよねー。
ということで、今回から数回にわたりクララの日記はグラント将軍特集になります」
「クララ、宗教心と同じくらい愛国心が強いですものね。
前大統領と直接話せて、よほど感激したのでしょう」
「こうやって見ると、クララって本当に絵に描いたような“保守的愛国者”だよね。
キリスト教愛国者”と言い換えても良いと思うけど」
「百三十年前のキリスト教徒としては、かなりリベラルな思想だとはでもあると思いますけれどもね。
更に付け加えると、クララは特別に何処かの宗派の教義に傾倒していたわけではないことも注目すべきでしょう」
「クララの宗派絡みの話は面白い記述を見つけたのでまた改めてということで。
今回はまず、グラント将軍の略歴を語ります」
「ただブログ主、『アメリカ史は全然門外漢なのでもっぱらネット情報基準となる点はご容赦を』とことですわ」
「はい、それでは、早速解説を。
第18代アメリカ大統領ユリシーズ・S・グラントは、1822年4月27日、オハイオ州で生を受けます。
17歳のときに陸軍士官学校に入学したものの、卒業時の席次は39人中21番ということで、決して特筆すべき物ではありませんでした。
これは軍人になってからも同様で、米墨戦争に従軍し、それなりに実績を残したものの、この最初の軍人生活の最終的な地位は中佐止まり。
しかも1854年に、多量飲酒を理由に軍隊を辞職してしまいます」
「これ以降にもお酒絡みの話が出てくるところを見ると、よほど“呑兵衛”だったようですわね」
「で、軍を退役後はセントルイスで農場経営、不動産仲介業、そして最後にイリノイ州ガリーナで父親の皮革・金物店経理助手として働いています。
もしこのまま彼が父親の家業を継いでいたら、アメリカ史がどうなったのか、興味あるところだよね」
「ところが、転機が来る、のですわよね?」
「そう、1861年に勃発したアメリ南北戦争
この年の4月、グラントは自ら募った志願兵を連れてイリノイ州に現れ、州知事は彼を大佐の地位で、歩兵連隊の連隊指揮官に命じます。
ここからが奇跡の出世街道の始まり。
同年8月には志願兵の准将に命じられ、西部戦線を任されているけれど、これは下院議員の進言にリンカーンが耳を傾けた結果だと言われていて、この時点で既に軍人として頭角を現していたことを裏付けています」
「激戦の最中、無能者を最前線に置く余裕なんてありませんものね。下手をすれば任命した自分が縛り首になるのですから」
1862年2月になって東部では北軍の苦戦が続く中、西部では河川砲艦と奇襲を組み合わせて南軍拠点を奪取。
西部戦線の東西河川交通の要衝を支配することにより、南部連合の中部と西部を分断する大戦略を可能にしたところなんて、ただの戦術家ではなく、大局を見うる戦略家だったことであることも証明してるわよね。
事実その年の10月、有名なゲティスバーグの戦いの最終日の翌日に南部でのミシシッピ河の重要な渡河点であるビックスバーグ要塞を攻略。
これにより南軍は東西に完全に分断され、この後、南軍の西部は完全に無力化されます。
リンカーン大統領はそんなグラントを首都防衛と敵攻略を兼ねるポトマック軍司令官に任命。
遂に東部戦線において北軍の全面攻勢が始まります」
「ついにアメリカ史上屈指の名将として名高いリー将軍との全面対決になるわけですわね?」
「確かにそうなんだけど、状況がここに至っては『グラント将軍=物量作戦 VS リー将軍=寡兵による防戦』って構図で二人の将軍としての優劣ってつけようがないんだよね。」
「つまり、戦略上で完全に優位に立った立場のグラント将軍に、戦術家としてのリーが対抗していた、と」
「そう、結局のところ、南軍が個々の戦いで一定以上の損害を北軍に与えても、完全に戦略上で優位な立場に立った北軍は痛くも痒くない、というわけ。
事実、北軍はグラントのポトマック軍司令官就任後、約一年で南軍の首都リッチモンド攻略を成功させ、南北戦争に終止符を打っているからね。
ということで、トータルで考えれば、戦略家としてのグラントが一枚も二枚も上手だったんだと思う。何故か今日の一般的な評価は逆転しているみたいだけど」
「恐らくそれは後の大統領としてのグラントの“実績”のせいでしょうね」
「……ま、“軍人としての優秀さ”と“政治家としての優秀さ”って、全く別のものだから仕方ないよね。
ただ本人的には“平和主義者”で“お人好し”だったみたいだし、今日でも50ドル紙幣の肖像画になっていることから、アメリカ国民には今日でも親しまれてるんじゃないかな?」
「残念ながら、50ドル紙幣は一般的にごく僅かしか流通していませんけれどね」
「…………………アメリカはクレジットカードか小切手社会だから仕方ないよね。
ともあれグラント将軍個人の資質については、この後のクララの日記でご確認下さい」
「それでは、長くなって参りましたので、今週のところはこの辺でお開きにしますわよ?」
「ちょっと待った! 最後に、グラント将軍の歓迎会の帰り道でのクララに、一言だけツッコミ。
『ただ頭を青い「ハンカチ」ですっぽりくるんで、目だけを出した怪しげな通行人が、懐を手にして、月明かりの下をとぼとぼ歩いていくのを見かけただけだった。』
完璧に、絵に描いたような泥棒スタイルでしょ! とっとと通報なさいよ!!」
(終)


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