Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第87回−5

1879年8月6日 水曜
ウィリイが帰ってきてから、家が狭くて困っている。
陽気なウィリイがいることで、私たちが感じている不便さは大体帳消しにされてしまう。
とはいえ、やはりとても不便だ。
特に一人でお祈りをしたくとも引きこもる部屋がない。
私は毎朝五時に起き、しばらく祈祷に時を過ごす。
しかしすぐに家中が起き出す時間になってしまう。
今日高木三郎氏の奥様が見えて、富田夫人の赤ちゃんが病気だと云われた。
勝氏のところには、あのいやらしい海軍将校のヘイワードとディヤリングが来ていたそうだ。
お逸に『アンディーン』と『若草物語』の二冊の本を贈ったと云うのだけど、きっと下心があるに違いない!
ウィリイは、金沢のミヤギタ氏が話したというおかしな話をした。
「日本の貴族越前侯がある時外国を旅行していた折りのことです。
ドイツに着いて、街で越前侯は一人の少年が彼を見て、通り過ぎざま、手を伸ばして鼻の上にあげるのを見たそうです。
何のことか分からないので、侯は家来にその仕草のわけを聞いたのです。
もっとも家来も困ってしまって苦し紛れにこう答えたそうです。
『上様は大層おえらくいられますので、この遠隔の国の少年までも敬意を表していると存じまする』と。
侯は心の中で『ナルホド!』と叫ばれました。
そしてえらい人に敬意を表す時のこの情況、つまり習慣を覚えておこうと思わけたわけです。
それである日、ドイツの貴族を訪問して貴族の前に招じ入れられた時、侯は子供の真似をして即座に親指を鼻のところへもっていかれました。
ドイツ人は勿論、とても困惑し、侮辱されたように感じて、日本の賓客をまさに追い出さんばかりであったとのことです」
私は無智な日本人が外国でこのように騙された例をいくつか聞いたことがある。