Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

クララの明治日記 超訳版第88回−1

1879年8月9日 土曜
グラント将軍は長居をし過ぎた!
『もしグラント将軍が早く帰らないと、暗殺されるだろう。資金が逼迫しているからな』
ビンガム公使の元に届いた匿名の手紙にはこう記されていたそうだ。
昨日聞いたのだが、杉田家のおよしさんの赤ちゃんである“かしく”が亡くなったそうだ。
この子は今まで見た日本人の赤ちゃんの中で一番綺麗で、良い子で、色白で、柔和で、しとやかで、整った口と、笑みを湛えた黒い眼をしていた。
私にとても懐いていて、この子を私の養女にしたいと思っていたくらいの可愛い子! 
やさしい救世主はその御名によって洗礼を授けられたこのかよわい子羊を、天上の神の寝屋に連れ帰り給うた。
赤ちゃんは脳溢血で急死した。
武さんはウィリイに日本語でこの知らせを書いてよこした。
だが、ウィリイはその手紙がよく読めなかった。
「田中が帰るまで」と思ってポケットに入れておいたが、それを忘れてしまったのだ!
で、昨日の朝になって兄はその手紙を私に投げてよこし「その招待状、読める?」と無造作に聞いてきた。
達筆すぎて読めなかったので、私はその手紙を内田夫人のところに持って行った。
内田夫人は手紙を読み終えて、びっくりしたように仰った。
「オヤ! オヤ! 悲しいお知らせよ! 杉田さんのお家でどなたか亡くなられた」
読み進めて貰った結果、間もなく亡くなったのが「ワガムスメ」だということが分かった。
ウィリイと母はすぐに、お子さんを亡くされたご家族にお悔やみを言いに出かけた。
武さんと武さんのお母様は「柳の下の新しい小さな塚」へお出かけになりお留守だったが、およしさんは家にいて悲しみに気でも狂わんばかりであった。
しかし、気丈に気を取り直して、母が赤ちゃんや武さんにしてあげたことに対しお礼を云った。
およしさんは“カーチャン”のために私が作ってあげた小さな枕を、赤ちゃんの頭の下に入れてお棺に収めたのだそうだ。
ご家族は私たちがお葬式に行くのを待っていたのだそうだ。
だが、なかなか来ないので、武さんと津田氏の二人が、赤ちゃんのために祈りを捧げたとのこと。
曾祖母、祖母、両親、四人の背の高い叔父たちの希望と誇りであったこの小さい花が折り取られてしまうとは不思議なことだ。
しかし「風が吹けば花は散る、しかし、善なる神はすべてを支配し給う」だ。
午後、アディの写真を撮ってもらいに行った。
よく撮れるだろうと思う。