Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第94回−2

1879年10月2日 木曜
大山夫人の英語は日ごとに進歩している。
こんな頭の良い人を生徒にし「昔々のお話」をするのはとても恵まれている。
彼女は大変若く、わずか二十歳だが、とても進歩的だ。
二回目のドイツ語のレッスンが今日の午後にあった。
ヘルム先生は少し早く来られ、アンガス氏とウィリイは一緒に来た。
ディクソン氏は大学の教授会があって遅れた。
文法のパート?を読み始めたが、まず最初の「イッヒ」が発音できない。
「イック」でもなく「イッシ」でもない、この二つの中間の、英語にはない喉音で、私には到底無理のように思えた。
だがそのうちできるようになるだろう。
アンガス氏の発音はひどいものだ。
耳が少し遠いので、正確な音が聞こえないのだ。
授業が終わると、ヘルム先生はドイツ語で私に聞かれた。
「お嬢さん、疲れましたか?」
私は意味が分かったのに吃驚して思わず英語で「ノー」と。
すると、先生は顔をしかめられた。
そこで勇気を奮ってドイツ語で応えた。
「いいえ、先生。先生はお疲れではありませんか?」
と、突然先生はアンガス氏に「君は悪い人か」と聞かれた。
アンガス氏はむっとして、英語とドイツ語をまぜこぜにして「僕は悪い人出はない」と返答した。
授業は勉強と遊びを一緒にしたようで面白かったが、先生はその気になればとても意地が悪くなる人ではないかと思う。
普墺戦争に二年行って、アメリカに三年いて、日本には九年いるという。
マリー・ド・ボワンヴィルと弟のチャーリーが土曜に発つのでお別れを言いに来た。
マリーのお祖母様に「ヨロシク、ドーゾ」と伝えてね、と私が云うと、このいたずらっ子はこう返した。
「おばあさん、日本のコトバ駄目ね。英語のコトバ、バカリ、ワカリマス」
「それではおばあさんはマリーの云うことが分からないでしょう?」
私が云うと、フランス語より日本語の方が達者になってしまったマリーが返す。
「マリー、日本のコトバ、コチラ、オイテ、おばあさんには、日本のコトバ話さない」
私は笑って、マリーの肩をゆすり、やわらかい両頬にキスをした。
「私はマリーが買いたいわ。マリーはいくら」
「三セン五リン」
そんな可愛らしい返事がすぐに返ってきた。
こんなにも可愛いマリーが帰国してしまうのはとても寂しい。