Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第95回−1

1879年10月10日 金曜
今日は、おやおさんとおすみが、結婚式以来はじめて来た。
ずっと一緒だった二人だけど、おすみとおやおさんとはいま一緒にはいない。
おやおさんが三河の殿様にお嫁入りし、奥様方になったので、肩あげや娘風の髪型と一緒に、娘時代の友達とも縁を切るのが当然とされているのだ。
オクサマは初めて来た時顔色が青く、疲れている風だったけれど、腰のおろし方は威厳に満ちていた。
だけど食事の頃には、桜の花の金蒔絵に赤いビロードの裏のついた車に乗り、毎日木挽町に来た頃の、やさしくてお茶目な少女に戻っていた。
おやおさんは英語で少し話をし、レース編みをしたり、猫と遊んだりした。
食事のあと私たちは歌を歌った。
おやおさんは昔よく弾いた曲を弾き、とても楽しそうにしていた。
最後に新しい賛美歌を歌った。
おやおさんはこれを見たことがなかったのか、歌詞を読むと感嘆したように云った。
「何てよい詞(ことば)でしょう。好きですわ!」
食事の時には、昨日母が作ったいちじくの砂糖煮が出た。
いちじくが回っている時、お逸が大山夫人に次のように云った。
「昨日の朝のお祈りの時にいちじくのことを何か読みましたね?」
「はい、キリストが叱ると消えたといういちじくの木のことでしたね」
これは読んだことがいくらかは心に残っているということなのだ。
私はてっきり、この人たちは登場人物の意味には全然注意を払っていない、と思っていたので、とても嬉しかった。
少女たち、というよりは若い奥様と侍女、それにいつもぴったりと付き添っている家来の小泉氏は、四時半頃丁寧に挨拶をして帰っていった。
大山夫人はそれより早く帰った。
今日は内田夫人、疋田夫人も来て、ミトン、ソックス、ケープなどいろいろなものを教わっていかれた。
皆が帰った後、母と私はお金の神様のお祭りである金比羅祭を見に行った。
母は手に小さな巾着をさげていったところ、ひったくりにあった。
だが母がぎゅっとつかんで離さなかったので、袋と中のお金は残った。