Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第95回−3

1879年10月27日 月曜
今朝起きると激しい風と雨が木製のシャッターに叩きつけていた。
寒さに震えながら朝食に下りた。
ウィリイは医科大学に行かずに家にいて、午前中は郵送する手紙を書いていた。
だがドイツ語の始まる頃までには少し晴れて、生徒は時間通りに集まった。
私は最上席、隣にはボロボロのカフスをした教授殿。
今日の「講義」は「少年」という意味の「クナーベ」(kunabe)の由来についてだった。
「これは英語の現在、悪漢という意味のネイブ(knave)の原語ですね」
ディクソン氏はそう解説し、更に餓鬼の「ブラット」もかつては「(良い意味の)子供」と云うことで王の子供は一時「ロイヤル・ブラット」と称されたとも話した。
ヘルム先生は今日は上機嫌で、次から次へと冗談を云って、私たちを面白がらせた。
日本にとても長くいたので、、先生は外国人の気まぐれの話をいっぱい知っておられる。
ところで、男子に英語を教えているあるフランス人は、数を覚えやすくするために手風琴を使う。
彼は生徒を一列に並ばせると、手風琴を広げて大声で「ワン」という。
生徒も全員一緒に「ワン」という。
次に手風琴を広げた高い音。
「フォア」はまた低い音。
こんな風に百まで行くのだった。
だがヘルム先生は二十二が一番滑稽で、ツゥエンティは低い音、ツゥーは高い音を組み合わせてやるのだと云われた。
もう一つ面白い話はドイツ人の先生で、学校でドイツ語のアルファベットを教えるため、黒板にABCDEFを書くとこう云うのだ。
「さてあの最初の字は何でしょう?」
「あれは『アー』です」
「さあ、『アー』と云って下さい」
「アー」
「さて、次は『ベー』です。云ってご覧なさい」
そこで全員「ベー」と大声で云う。
「そう、そのとおり。この字を覚えておいて下さい。
さて、その次は『ツェー』です。わかりますか?」
「はい、ツェー」
「はい、よろしい。さてその次は――」
丁度その時。彼の友人が突然教室に入って来て「終わるかね、スミス」と聞いてきた。
「やー、ちょっと待ってくれ、もう終わるから」
そして生徒にこう聞いた。
「最後の字は何だった?」
「ツェー」
「そう、そのとおり。次のは『デー』だ。云えるかね?」
「デー」
「それで最初の字は?」
「アー」
「そう、さあ僕が戻ってくるまで、これらの字を勉強していたまえ」
そう云うと、教師は帽子をとって、驚き呆れている生徒を尻目に、友達とトコトコ行ってしまったという。
もう一人の外国人は教室にデッキチェアを入れさせ、パイプや葉巻をくゆらし、ブランデーを飲み飲み、生徒の復唱を聞いていたという。
東京の医科大学のマックブライドというスコットランド人も同じ事をやり、その授業中にスコットランド歌謡を口笛で吹くという。
この人たちは何と不作法だろう。
日本人は外国人のことを一体どう思うだろう?