Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第99回−1

1879年11月26日 水曜 
今朝、朝食後、母とウィリイと私は銀座まで行った。
が、その直前にウィリイは勝氏に会いに行って、長話をしてきた。
勝氏は現在の事態を厳しく批判されたそうだ。
西郷隆盛氏の死後は日本には正直な人間は一人もいない」とまで断言された。
ミカドは非常に裕福だが他はすべて貧しく、官吏はみな他人の物を奪って私腹を肥やそうとし、正直な者は一人もいない。
今日の時勢では正直は割りが悪く、正直に実行しようとつとめるものはすべて、名誉の価の低さに絶望し、自殺に追い込まれてしまうと云われたという。
昼食の後、およしさんが来てしばらくいた。
グレイ夫人がみえたので、津田氏と約束をした広尾に出かけた。
津田氏は家におられ、お茶を飲んでから菊園へ出発したが、奇妙な一行に見えたことだろう。
先頭はグレイ夫人の車でアディが同乗し、津田氏、母と私と続き、最後は二人の老婦人とおふきが、ちょっと離れて二台の人力車に乗っていた。
広尾はあまり遠くなく、じきに素晴らしい菊を見られた。
私はこんなに完全に育てられた菊を見たことがない。
ガラス屋根でよしず張りの小屋に、小さい者から順に、整然と何列にもおいてあった。
一本の茎に一個の花だけついており、慎重な接ぎ木で見事に育っていた。
違った品種には花の印象によってそれぞれ別の名前がついていて、とても詩的で美しい。
桃色と金色の花は「金竜」。
濃い黄色の卵形の花は「金鈴」。
幅の広い花びらの純白の品種は「月下の雪」。
同じ白でもピラミッド型のものは「雪山」。
ピンクのは「美少女」といった。
私が特に気に入ったのは淡黄色の菊で、花びらの内部は茜色で何とも言いようのない色合いだったが、ついていた札には「落葉衣」とあった。
ほかには「雅鶴」「永春」「雪灯」<中央がまっ黄色の純白の花>、「踊り子」「水晶屏風」「二十五弦琴」「あばれ獅子」「水鳥」などがいっぱいあった。
屋根から短冊が下がっている小屋があり、みると十歳の少女の書いたものだった。
「うまい詩だ、利口な子だ」
読んでくださった津田氏がそう云って褒めた。