Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第99回解説

【クララの明治日記 超訳版解説第99回】
「ようやく開始当初から予告していました同志社大創設者の新島襄氏の登場ですわ」
「ちなみに、この方の墓碑銘を書いているのはうちの父様ね」
「いきなりそういう話に持っていくんじゃありませんことよ!」
「でも随分と不思議な感じがするよねぇ、父様と新島襄氏がそんな緊密な関係だっただなんて」
「それを云えば、クララがこの日初めて新島襄氏と出会ったというのも不思議な話ですわよ。
本来は“もっとずっと以前に”知り合っていてしかるべき人間関係ですのに」
「みたいだねー。というわけで、ざっと新島襄氏の経歴紹介。
新島襄氏が生まれたのは天保14年(1843年)。江戸の神田にあった上州安中藩板倉家江戸屋敷で、藩士の子として生まれています。
で、ここから先、wikiや一般的な歴史の本では『幕府の軍艦操練所で洋学を学ぶ』あたりまで少し経歴が飛んでるんだけど、この中間があるからクララともっと前に会っていて然るべきって話になるわけ。
ちなみにこの場合の幕府の軍艦操練所というのは神戸のじゃなくて、築地にあった方ね。
十四歳で江戸で勉強を始めた時の蘭学の先生が、クララの日記でも幾度も出てきている杉田家の玄瑞先生。先生からかなり可愛がられていたみたい。
杉田家はホイットニー家が日本に来て一番最初に世話になった富田夫人の実家だし、クララも頻繁に杉田家を訪れているでしょう?
で、新島氏が密航の罪を許されアメリカの大学から日本に帰ってきたのは明治7年だから、クララが日本に来た頃と殆ど同じなわけ。
当然世話になった杉田先生のところに挨拶に来ても不思議じゃなくて、その際に熱心なキリスト教信者であるホイットニー家を紹介されても全然不思議はないよね」
「そこが人間関係の不思議なところなのでしょう。
さて、話が飛びましたけれど、新島氏は元治元年(1864年)、函館からアメリカへ密出国します。
動機はアメリカ人宣教師が訳した漢訳聖書を読みキリスト教に興味を持ったから、というのですから筋金入りですわね。
無事密航に成功。アメリカで洗礼を受け、大学まで出たところにやってきたのがアメリカ訪問中の岩倉使節団……と一般的には書かれているのですけれど、実はこの中間もあり、これもまたクララと関わりのある人物が登場するのですわ」
森有礼氏だねー、丁度この頃は駐米少弁務使でアメリカにいて新島氏のこと知って、正式な留学生にした上で、岩倉使節団に引き合わせたという経緯で」
「ちなみに丁度その頃、新島氏は使節団と一緒に日本からやってきた女子留学生と同じ町に住むことになって、何度か訪問して激励しているんだよ。
その少女の名前は津田梅子。云わずと知れた津田仙氏の娘さん。新島氏にとっては“恩人”の娘さんだから、という理由もあったみたい」
「津田仙氏と新島襄氏が知り合ったのは杉田玄瑞先生の下で外交交渉していた時ですわね。
これもあまり知られていないことですけれど、密出国した新島氏の手紙を、幕府の目を盗んでアメリカ領事館経由で新島氏の親元に届けていたのも津田仙氏ですわ。
クララの日記で描かれている、熱心なキリスト教徒だけど、服装がだらしなくて、面白い言動ばかりする津田氏の姿からは、そんな危険な橋を渡っていたことなんて想像できませんわね」
「うーん、しかし、こうやってじっくり考察すると、杉田玄瑞先生、森有礼氏、津田仙氏。
恐らく新島襄氏の日本帰国前からの繋がりが相当深い三人とクララ、これだけ緊密に付き合っていながら、この日初めて新島氏に会うなんて、本当に人の巡り会いというのは“偶然”が左右されるんだねー。普通、知り合っている方が必然でしょ?」
「他人事じゃありませんわよ、お逸。
恐らく貴女の父上が新島氏の墓碑銘を書くことになったきっかけ、つまり新島氏と知り合ったきっかけは、まず間違いなく杉田玄瑞先生か津田仙氏かのラインですわ」
「クララの日記を読む限り、父様、キリスト教に関しては相当寛容、というか夢お姉様や孝子お姉様がクララとアンナ先生の勧誘で実質的にキリスト教徒になってたことも全く気にしていないみたいものね。梅太郎がクララと教会に行くことも」
「勝氏にとって宗教の教義そのものに特に興味はなく、それに伴う“教育”の中身が大事だったのでしょう。流石は徹底した現実主義者というべきかしら?」
「ただ、それにしては梅太郎の教育に関して完全に放任主義だったっぽいのは不思議なんだけど。だから後年梅太郎は……って、先の話はひとまず置くとして。
11月29日分の、ヘボン博士とクララによる“日本人の先祖崇拝について”の問答は興味深いよね」
「ですわね。ただ、先祖崇拝と怨霊思想がごっちゃになっている気がするのはクララの理解が足りなくてそういう書き方になっているのか、ヘボン博士自身が怨霊思想の方に重きを置いていたのか、興味あるところですわ。
また別の機会があったら検討してみたい話題ですわね」
「とりあえず、今週は長くなったのでこの辺で。
来週は記念すべき連載100回目の予定です」
(終)


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