Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第100回−2

1879年12月4日 木曜
土曜はマッカーティ夫人のところ、月曜はライト氏のところに行くことになっている。
今朝早くリーランド夫人に会いに、加賀屋敷へ出かけた。
フィッツジェラルド夫人のために屏風や他のものを見に本町に一緒に行っていただくため、さわやかな朝の空気の中を出発。
すべてが気持ちが良く、人力車は身の引き締まる空気の中を懐かしい場所を素早く通り過ぎていった。
「オールド・ミスの木」、工部省、工部大学校、虎ノ門、そして最後にお堀のそばの広い通りに出た。
いつも通りに印刷局の立派な建物の方へ行こうと、先を歩いていた男の人を追い越しかけると、その人は半分振り向いて云った。
車屋さん。いつもの道は通れませんよ。城門を通らなくては駄目です」
見ず知らずの人に親切にしてくれる、このお節介だが善意の人にお礼を云い、お堀の石垣の一番高いところに聳えている塔のすぐ下の、雑草の生い茂った跳ね橋を渡り、古めかしい城門に入った。
城門につきものの、仲間小屋、門番小屋、馬小屋、従者のいる場所、門の上には狭い格子の矢狭間や、外部に通じる石の階段がすべて揃っていた。
途中、誰にも会わず、何度も直角に曲がり、高い場所に堂々とした木が繁り、立派な屋敷がチラチラ見えるところに来た。
「あれは紅葉山で、天子様のお住まいです。周りの庭園は、見事な木や楓で一杯です」
車夫の竹次郎が指差しながら云った。
「この門は何というの?」
「これは楓門で、あっちが不浄門です」。
私はこの黒くて陰気な「死者の門」を興味深く見た。
黒い橋の上は、門のところまで草が生い繁り、何年も人が通ったことがないようだった。
気のいい竹次郎は昔、お城の死人は全部その門から運ばれて埋葬され、生きている人はこの門を通ったことを教えてくれた。
不浄門を通りすぎ、紅葉山御殿を通って、また大通りに出ると、二年前、ミス・コードン・カミングスと写生をしに行った、半分モダンで半分昔風の立派な通りだった。
加賀屋敷に着くと、リーランド夫人は出かけていたので、また戻ってくると約束して田中不二麿夫人に会いに行った。居間に通された。
「日本語でお話しましょう」
奥様がそう云われるので、とても楽しくお喋りをし、すぐ内輪の話になった。
裁縫のクラスに来るつもりだそうだ。
アメリカで拾った紅葉の葉を見せて下さったが、またとても色鮮やかだった。
奥様はメイエ夫人が嫌いだという。
訪ねていくと、あの尊大な人は客間に連れて行き、壁の絵を勿体ぶって指差し、こう云ったそうだ。
「あれは私の初めの夫です」
しかも現在のご主人の真ん前でだという。
田中夫人はこれはとてもおかしな振る舞いで、日本ではこんなことはおおっぴらにせず、隠しておきたがるものだと云われた。