Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第103回−2

1879年12月25日 木曜  
クリスマスおめでとう。
今朝は早くから家中のものが起きて、おめでとうと挨拶し、朝食が終わると、今晩のおもてなしの料理にかかった。
十一時に芝に出かけ、クリスマス礼拝に間に合った。
礼拝者は多くなく、いつものメンバーの他、ジェイミーがホートン夫人と坐っているのが見えた。
ディクソン氏は遅れてきて、私たちのうしろに坐った。
ディクソン氏は私たちと一緒に聖餐式に残ったが、ウィリィとジェイミーは出て行った。
ジェイミーはまた瀬戸物屋に寄ったのだ。
お客がみえ始め、ディクソン氏は挨拶をしたり、珍しい立体写真鏡を見せてあげたりした。
ジェイミーは綺麗な女の人が来ると、一々名前を聞き、羽根つきをして愛想を振りまいたり、子供たちと遊んだりして、田安公の到着を待った。
徳川の若様は四人の家来と一緒に客間を謁見の間になさった。
乳母たちは別の室に、小さい子供たちは真ん中の部屋に、もう少し大きい子供達は食堂に入れた。
ディクソン氏はその光景をとても面白がった。
それぞれの部屋に行くたびに戻ってきては「これは面白い」と囁いた。
全部の人が集まると、ディクソン氏は世界中のクリスマスツリーの下で語られているクリスマスの話を手短に話し、東京大学の学生の森田が訳した。
それから生徒たちがキャロルを歌いツリーに火を灯し、贈り物が分配された。
「オルガンのそばにきて弾いて欲しい」
内田夫人のおば様がそう云われたので、私がオルガンを弾いた。
おば様は耳がとても遠いので、坐ってオルガンに耳をつけ一心に聞いておられた。
「真の神の子の誕生を祝う歌ですよ」
そう説明してあげたら、祈るように手を組み、深く頭を垂れた。
夢さんはクリスマスの意義をおぱ様にすっかり教えてあげたそうだ。
次にジェイミニーに頼むと、スコットランド民謡で一番美しい「アニー・ローリー」を歌うからそう伝えて欲しいと云った。
歌い終えると、おば様はこう云われた。
「アリガトウ。耳が遠いのですが、今晩は聞こえて大変うれしゅうございます。
この歌は前に聞いたことはないが大好きです」
それからケーキを貰って、とても喜ばれた。
今宵のゲーム係はジェイミーで、みんなを楽しませた。
初めは椅子取りゲームをして遊んていた。
が、若殿様に気を遣って本当の盛り上がりにはならなかった。
私たちは兎も角、日本人としては流石に徳川の若殿様を椅子から蹴落とすわけにはいかないから仕方ないことだろう。
次に動物園ゲームで、ジェイミーは屏風と敷物で囲いを作った中に鏡を置き「何でも見たい動物を見せましょう」と云った。
みんなが「だまされ」て、とても面白がっているのを見るのは楽しかった。
馬、猫、獅子、狼、狐、蛇などいろいろ見たいものが出たが、武夫は大胆に「人間が見たい」と云った。
田安公は獅子が見たいとおっしゃり、お付きの者は猫と云った。
これが終わるとジェイミーは森田を連れて行った。
敷物で森田をすっかり包み、頭に新聞紙をかぶせ、目だけ残した。
それからみんなが呼び入れられ、目だけ見て誰かを当てるようにと云った。
無論成功しなかった。
グルグル巻きの格好といったらなく、武夫はじっと眺めてからこう囁いた。
「ウ、ウゴキマスヨ、コイツ!」
とうとう紙が取られ、森田は「ヤーヤー」といって飛び出して、一同を驚かせた。
十時に皆、お礼を云って帰っていった。
それから係の者は疲れ切って軽い夕食を取った。
「まるで結婚式の後のようだ」と云ったのはジェイミー。
でも、とにかく楽しいクリスマスだったと思う。