Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第104回−3

【クララの明治日記 超訳版解説第104回】
「江戸という町は本当に火事が多い町ですわね、毎年のように大火が起こっている気がしますわよ」
「八千戸焼失クラスになると、流石に数年に一度だけどねー、三年ぶりかな? 
……って、そうそうクララの云っている“三年前、私たちが木挽町で、同じように築地の火事で今にも危険な目に遭いそうになったとき”がそうだね。
前回が一万戸焼失クラスで、明治年間最大規模といわれてるから大きいと云えば大きいかも?」
「クララ、今回は現場に行ったわけでもないのに、火事の模様をよく詳細に書けてますわね」
「特に今回の注目点は、ヴァーベック氏のエピソードかな? 
ああ、ヴァーベック氏と表現すると現在の歴史教科書の書き方と違うから“フルベッキ博士”と書くべきかな?」
「読み方の違いはオランダ語読みと英語読みの違いですわね。博士自身はオランダ人……正確にはオランダ系ユダヤ人ですけれども。
日本人に発音しやすいように博士自身が“フルベッキ”と名乗ったそうですわ。
歴史教科書などでは“お雇い外国人で政府法律顧問を務めた”程度しか知られていないでしょうから、ざっそ博士の経歴を説明。
オランダのユトレヒト生まれの博士は、当初宣教師としてヘボン博士と同じ1859年という開国最初期に来日。
ヘボン博士が横浜に居を構えたのとは対照的に、長崎に住んだことからその後の経歴を全く異にすることになりますわ。
幕末期に長崎奉行所管轄の済美館や、薩長土肥の俊秀が集う佐賀藩の致遠館で英語の教鞭を執り、この時の教え子に大隈重信副島種臣がいたことから、維新後は明治政府に重用されることになります」
「ただ政府顧問としてよりも、後の明治政府の在り方に一番影響を及ぼすことになったのは、政府首脳の遣外使節団派遣の助言をしたことだろうねー。
もっとも、当初は旧知の大隈重信などの小規模のものを想定していたらしく、まさか政府首脳の大半が使節団に加わることになるとは思っていなかったみたいだけど」
岩倉使節団があの規模まで拡大したのは、政府内部の主導権争いだったらしいですわよ。
その結果については、功罪半ば、というところでしょうけれど」
「功は政府首脳が直接欧米の政治を体験できたこと、罪は征韓論勃発に端を発する後の士族反乱ってところかな?」
「博士が政府顧問を務めた時期は短かったものの、誠実で非常に謙虚な人柄、そしてクララも書いているように本当に日本人と同様に日本語を話せたこともあり、人望も高かったようですわ。
一度帰国して再来日した後はもっぱらキリスト教の布教に努め、聖書の日本語訳や日本人のキリスト教教育にも取り組み、日本でその生涯を終えたくらいの親日家ということですから、本当にこの夜、圧死されなくて何よりでしたわ」
「で、やっとここから本題なんだけど、この日、博士を救った“勲章”って、如何にも日本的だなあ、というお話。正確に云うと、日本的というより幕府的かな?」
「どういうことですの?」
「今でも“○○御用達”とかあるでしょ? まあ、一番有名なのは宮内庁御用達とかね。
元々はこれ“幕府御用達”に由来してて、文字通り幕府・大名・旗本・公家・寺社などに立入あるいは出入する特権的な御用商人の格式のひとつだったの。
御用商人は身分は町人であっても苗字、帯刀を許されたりね。
あと、こうした正規の称号とは別に、ちょっとしたことで幕府に貢献したとかなると“幕府御用”みたいな書き付けとか貰えたわけ。
これがどんな時に役立つかというと、火事やら一揆やら発生した時に“幕府御用”を掲げた店は、同心や火消しが最優先で守ってくれるという特典がつくんだよね。
実際そうやって助かった店の事例は結構多いみたい」
「ああ、なるほど。“幕府御用”とそこに書いてある以上、そこは“幕府の領地と同様”というわけですわね。
つまり今回のヴァーベック博士に当てはめて云えば、天皇陛下の勲章を掲げている以上、天皇陛下をお守りすると同様の最優先事項である、と」
「そういうこと。実際の勲章の効能はどうあれ、少なくとも警官達の意識の中には、幕府時代の上のエピソードと同じ意識はあったろうね」
「といったところで、今週のところはこの辺で失礼致しますわ。来週はクララの最後の日本での年末年始の模様を……」
「ああ、福沢家の子供達の非礼! 非礼の話!」
「と、お逸が五月蠅くなるので強引に今週は強引にここで終わらせて頂きますわ」
(終)


と云った所で、今週も最後までお付き合い下さった方、有り難うございましたm(_)m。
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なおブログ末尾に「クララの明治日記 超訳版」参考資料(厳選版)の紹介をつけました。
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