Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第107回−2

1880年1月8日 木曜
ヘップバン夫妻と昼食のお約束があったので、今朝、新橋へ行った。
駅につくと丁度十時半の汽車が入ってきて、旅なれない旅行者をかもにしようと待ちかまえている車夫の手から博士をお救いした。
十二時に家に着くと、昼食ばかりでなくディクソン兄弟も待っていだ。
食事の間、話がはずみ、冗談が乱れ飛び、みんな上機嫌だった。
ヘップバン博士は母の隣に、私は博士とジェイミーとの間に坐った。
博士は私のほうに体を向け、云われた。
「クララさん、あなたはもの静かでいい、私はあなたが好きだよ」
その言葉がほかの人に聞こえたので恥ずかしかった。
「それは驚きました。無口なのは不運だと思っていましたのに」
私がそう云うと
「私の目からみれば、活発なほうが不運です。
静かな人が全部好きという訳ではないが、あなたは好きですよ」
私をこんなに褒めて下さるとは、博士は本当に良い方だ!
それで私は「博士のお世辞なら喜んで受けます」と云った。
ディクソン氏は食後、歌をうたったりオルガンを弾いたりしてヘップバン夫人を喜ばせた。
ジェイミーは学校のほうが始まり、自称「お山の大将」なので先に帰った。
ヘップバン夫人が、ロシア公使館のストルーベ夫人を訪ねられるので、母と私は途中の教会まで歩いた。
夫人はスペイン公使館にも寄って、先月の十二日にパークス卿夫人が亡くなったことをフェ伯爵に告げたいと言われた。
またジェノア公爵が井上夫人のところで開くレセプションに招かれているので、井上夫人にも挨拶したいとのことだった。
母は早く教会を出、私に、残ってミスーヤングマンをお茶にお連れするようにと言った。
いわれたとおりに待ったが、そうしなければよかったと思った。
みんな私か見当もつかない人と婚約したと思っているらしく、ミス・リートがこう云った。
「クララさんあなたのことを聞きましたよ。姓と国籍をお変えになるそうね」
私は驚いて「えっ」というと、ミス・ギューリックも「私もよ」と相槌を打ち、スコットランド帽を手に取って私の目の前で意味ありげにくるくるまわした。
クレッカー夫人も近寄ってきて私に手をかけ、こんなとんでもないことを云う。
「すっかり聞いてしまいましたよ。
でも心配することはありません。誰にも言っていませんから」
そして、私の頭を肩のところに引き寄せやさしくキスしてきた。
「私たちはみなとてもおめでたいことだと思っていますのよ。
ほんとにお似合いですものね」
私はこんなことを言われてほとんど半狂乱。
ミス・ヤングマンがくすくす笑いながら云ったことは一番ひどかった。 
「ヒヒヒ、オルガンを売ったんですか、そうですか、
ヒヒヒ、しかもディクソンさんにですってね。
あなたのところに戻ってきたら変じゃありません? ヒヒヒ」
みんな物言いたげな顔をしているので、私はひどく憤慨し故意に皆を避けて家に帰った。
人の噂の肴になるなんてほんとうに厭だ!