Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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帰ってきたクララの明治日記 第6−2回

1883年5月14日 月曜
今日内田夫人のお茶摘みの手伝いをした。
相当量があるので、できるだけたくさん手伝いがほしかったのだ。
天気は良いし、外で涼しいすがすがしい春の空気にひたって、とても気持ちがよかった。
私の思いはたえず天のいとしい者へと向き、まわりの伸びたお茶の木の茎からよい香りの葉を摘みながら、幾度となく涙がうかんできた。
艶やかな葉かげに、あちこちに散らばって、人々は働きながらいろいろなことをしゃべり合っていた。
クリスチャンたちは同盟会や説教について、青年たちは友達や娯楽について、使用人たちは給金や物価や自分たちの主人のことについて話していた。
あたりは楽しげな声や軽やかなさざめきに満ちていた。
皆よろこんで働き、すぐに大きいニッケルメッキのお盆がお茶の葉でいっぱいになった。
台所から「ワレタビビトゾ」と讃美歌をうたうクメの声が流れてきた。
茶摘みをしていた一人の老人が私の女中の声と上手な歌をほめてくれた。


日本人に伝道をしておられる津田仙氏と新島襄氏が今朝来られ、楽しい語らいの時を過ごした。
現在世界中の教会が示している関心を彼らも持っておられる。
神の愛の焔がすべての日本のクリスチャンの間にひろがりつつあるようだ。
真の復興が今まさに来ようとしているし、皆は聖霊の洗礼を祈っている。
幼い子供たちでさえ遊ぶのをやめて友達の間に福音を広めようとしている。
神学校の生徒は大いに関心をもち、女子の学校では生徒が自分たちの部屋で祈祷会を開いていて、いつまでも寝ないので先生方は苦労している。
遠足で年長の少女たちが見えなくなると、彼らは決まって棕櫚の木の下で祈祷会をしているのだ。
私は新島氏に告げた。
「母はあなたと話をしたがっていました」
更に、日本人の間に信仰が復興してきたことを母が知ったらどんなに喜んだであろう、と申し上げた。
新島氏は感動に声を震わせてお答えになった。
「お母様はご承知ですとも、天国で」
この方の篤い信仰の人柄に打たれて、私は思わずこう思った。
「彼はキリストと共にあり、キリストから教えを受けておられる」
新島氏は真に聖人だ。
私は日本人に対してこんな風に感じたことは今までに一度もない。
おお、ここの、私たちの親しいクリスチャンたちがこの恩恵にあずかれますように。
でもこの人たちは集会に出たことがないから、人生の糧を多く必要とするのではないだろうか。
母が逝ってしまった今、誰が彼らにそれを頒つことができようか。