Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

帰ってきたクララの明治日記 第7回−2

1883年5月18日 金曜
今日は日本福音伝道会の閉会式が行なわれたが、そこで面白い光景を見た。
私は二時に出かけ、劇場で開かれると聞いていたので島原へ行ったが、ステージの上の役者を一目見て場所を間違えたことに気がついた。
しかしじきに場所がわかって、宣教師たちがたくさんいる壇上に案内された。
久松座という劇場はおよそ二千の人々で、上から下まで通路まで一杯。
私たちが入って行った時はウォデル氏が話をしていて聴衆は夢中になっていた。
演説者が何人も続き、その中にイービー氏、ヴァーペック氏、伊勢時雄氏、大阪の宮川経輝氏、そのほか私の知らない人がいた。
イービー氏はあまり興奮して夢中になり、聞きづらいほどの大声で話した。
しかし、彼の話は聴衆の心に深く訴えるようであった。
ヴァーペック氏は日本人の間で敬われていて、一同尊敬をもって傾聴した。
伊勢氏の演説は非常に個人的で、大部分の聴衆から反感を買った。
そして救済の計画について話し出した時、「イヤー! イヤー!」という叫びと、手を激しく打ち鳴らす音でその声はかき消されてしまった。
伊勢氏は辛抱づよく待ったが、はじめようとするといつも声がかき消されてしまった。
幾度か試みたが駄目で、とうとうただ頭を下げ祈りを始めた。
すると突然しんと静まりかえり、伊勢氏は人々の心に深く訴えるように熱心に祈った。
誠に上品に、熱心に、雄弁に祈ったので、誰も彼も驚き、誰一人としてその邪魔をする者はいなかった。
伊勢氏は京都の人で、日本人の説教者の中では一番の精神主義者だと考えられている。
宮川氏もたいそう雄弁なので人気があり、立ち上がると盛んな拍手で迎えられた。
宮川氏は背が低く痩せていて黒々としたあごひげがあり、ほっそりしたきゃしゃな手を使い、いとも上品な手ぶりで話をする。
とても雄弁で言葉がすらすらと口をついて出て来て、その熱烈さは会衆一同を引きつけた。
すべてが終わって、次は祝祷という時に、バラ氏が立ち上がり、少し話をした後で「イエス・キリストに興味があり、もっと聞きたい人は手を挙げるように」と言うと、五十以上の手が上がった。
バラ氏は梅太郎が長崎で改宗したことを話したが、もちろん名前は言わなかった。
頌栄のあと、奥野師は演壇に上がり、腕を広げ祝祷をしたが、その様子は司教のよう。
それからバラ氏は「本当に信じたいと思う人は、ここに残ってもっと話を聞くように」と言った。
帰る人で数分ざわざわした後、平土間にひざまずく五十名ほどの人たちを残し、後は すっかり出て行ってしまった。
牧師たちはこの人たちのまわりを歩きまわり、ここかしこで一言しゃべったり、祈ったりした。
一方壇上には一群の外国人が立ち、この新しい信者仲間のために喜び、また祈った。
私たちが退席して外に出たところ、そこの賑やかな通りには日本語の聖書やパンフレットや讃美歌の小さな売店が両側に並んでいた。
かなりの数の仏教の僧とギリシャ人の僧も一人出席していた。