Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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帰ってきたクララの明治日記 第7回−4

1883年5月31日 木曜
昨夜私は大層うれしいニュースを耳にした。母は天国でそれをご存じだろうか。
津田氏が来られてこんな話をされた。
親睦会で雄弁に説教をされた大阪の宮川氏が勝氏をたずねたところ、こう言われたというのだ。
『宗教については、ホイットニー夫人の宗教以外のものはいやだ』と。
勝氏は日本人の間で暮らした母の生活ぶりを見、その死をも見てこられた。
母はその生と死において、真の宗教とは如何なるものかを実証した。
子供たちも今また同じ道を歩いている。
宮川氏は求められるまま、終日勝氏と話し合われたという。
なんと喜ばしいことであろう! 
「勝氏は今は未だ受け入れてはおられないが、やがてはクリスチャンになられるだろう」
津田氏はこう言われた。
おお、神様、母の努力に対して、栄冠を与えたまえ。
母はどんなに熱心に勝氏のために祈ったことであろう。
私たちが以前ここにいた時、毎日曜の朝、教会へ行く前に一時間、勝氏のため祈りを捧げていた。
その時私はこのような熱烈な祈りが無駄になり得ようはずはないと思った。
もしこの大きな影響力をもつ方がクリスチャンになられたら、私たちにどのような喜びがもたらされることか。
また、私たちの苦悩にどのような慰めがもたらされることか。
もし彼が信者になられたらこのヤシキの人たちは皆改宗するであろうし、ここに教会をもちたいという我々の心からの願いもかなえられるであろう。
ここのクリスチャンたちは、この地に自分たちの教会ができるようにと祈りつづけているのだ。
ヤシキでは、私たちが日本を留守にしている間も小さな集会が続いていた。
それに門には「ヤソキョウ」という表札をかけていたので、勝氏は自分のヤシキに教会をもっている、という評判が長いことたっている。
この界隈で我々は「イエスの説教者」と言われている。
おお、どうか我々がそれに値する者でありますように。
現在日本人の間に深い信仰心が芽ばえている。
「主の御前より慰安の時」(使徒行伝三・二〇)を迎えるのは、日本では初めてのことである。
おお、母が存命でこれを見ることができたら! 
「私はにわか雨の最初のしずくの音をきいた」
母が言っていたとおりである。
しかし本降りの雨を見ることは許されなかった。
先日私はちょっと用事があって、疋田夫人のところへ出かけ、たまたまそこにクリスチャンの人が一人いたので、三人だけの祈祷会をした。
今日は私の婦人祈祷会をはじめる日である。
梅太郎は横須賀か神奈川へ造船の勉強に送られる筈だったが、あやうく逃れて、遂に牧師になる勉強をすることを許された。
父上は梅太郎を上野の近くに住む木村熊二氏の下へつかわされ、彼は大いに満足している。
母が逝ってから梅太郎はずいぶん変わった。
少年から大人へと成長し、ますます真面目になり、私は梅太郎がこのまま導かれ、日本人の幸福のために力になるよう祈っている。