Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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帰ってきたクララの明治日記 第12回−3

1884年4月6日
横浜から来た数人の友達と一緒に、許可を得て訪れた印刷局、つまり造幣局で大変楽しい一日を過ごした。
雨天ではあったが、この楽しみは逃すには惜しかったので、私たちは午前九時ごろ大きな建物に着き、丁寧なお役人に案内していただいて一まわりした。
その役人は英語が話せなかったが兄の通訳でよくわかった。
まず広間に案内され、お茶をご馳走になり、上の方に通じる長い階段を上り下りする人々を眺めていた。
従業員の特異な服装が印象的だった。
男の人たちは白いシャツとズボンを着用していたが、女の人たちは西洋と日本のスタイルを合わせたようなスーツを着ていた。
後ろに襞があり、脇の開いた一種の長いスカートと、ゆるみのない袖、腰の形を出している長着で、この上下の組み合わせは大変便利そう。
造幣局の中だけこの服を着ていて、局への往復には自分の服に着替える。
女の人たちは髪を結うことを許されていない。
ひっつめにしているのは髪の中にお金を隠すことがないようにするためだと思われる。


私たちは第一に用紙部へ案内された。
そこでは様々な種類の紙を作っていた――少なくともいろいろな方法で使うための紙を用意していた。
一つの種類は厚い浮き彫りにしたなめし革のようなもので、きれいな模様を押してから金銀箔で覆った非常に豪華な壁紙や強い本の表紙や手提げかばんをつくるものもあった。
「縮らせる」過程がわかって嬉しかった。
それは滑らかな紙を二つの水平の重しの間に置き、機械で締めつけてできあがる。
またこれでクレープ紙に波形を出させる。
機械はたいてい外国製で完全無欠である。
たくさんの請求書の用紙等のほかに切手や紙幣の彫刻は大変興味深かった。
熟練工を必要とする緻密な機械はすばらしかった。
機械のほとんどはドイツ製であったが、一つには「ローデン・ニューアーク N・J」と記されていて私たちはまるで旧友に会った思いがした。
この機械は貨幣のための最も細かい網目細工の仕事をしていた。
貨幣に費される手間と時間はびっくりするほどである。
十セント、つまり一円紙幣の一つ一つの小さい模様のために別々の機械が必要なのだ。
それでも、何もかも非常に規則正しく美しく動いていた。
そしてすべての日本の工員たちも。
何人かの製図工が図案を描いているのを見た。
また何人かの画家が極めて細かい模様を古代絹などから写しているのも見た。
電気メッキも大変興味深かった。
銅板が電槽の中に投げこまれ、すっかり銀色になって出て来るのは素晴らしかった。
造幣局の驚異を全部見学してから、私たちは見事なご馳走の待っている食堂に案内された。
そこでとても愛想のよい別の二人の紳士に紹介された。
案内してくださった方の隣に坐り、この場のために、とっておきの精一杯の日本語で、私の愉快なお相手と色々の面白い会話を交わすことに成功した。