Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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帰ってきたクララの明治日記 超訳版第13回解説

【帰ってきたクララの明治日記 超訳版解説第13回】
「今回の最初の日記は明治初期の“園遊会”って感じなのかな?
来日九年目にして、クララ、こうして初めて陛下との対面だったねー」
「正確には上野で開催された内国勧業博覧会や地方巡行の折の行列で何度か姿を拝見しているのですけれどね。
実際に対面したのは確かにこれが初めてとなりますわ」
「意外といえば、意外かもね。兄のウィリィさんなんかはこの六年近く前、金沢で教鞭を執っている時に、北陸巡行された陛下の眼前で講義を行っていたりするし、母親のアンナ先生なんかは、何度も皇后陛下の学校の講師の誘いがあったのに」
「ですけれど、普通に考えれば、外交官でもお雇い外国人でもないクララに接点はありませんもの。
というより、今回のこの場にクララがいること自体が変なのですわ」
「んー、云われてみれば確かにそうかも? でもウィリィさんが公使館付き通訳の任を得ているから、満更“外交官の家族”という範疇から外れているわけではないかな?
で、今週の本題だけど、クララが描写した陛下のお姿は、大体この当時の陛下とお会いした外国人たちの記述と似たり寄ったりで、ごく平均的な日本人青年の描写だね。
『最初天皇様とはわからなかったが、写真から想像していたより、ずっとご立派に見えた。
背丈は約五フィート八インチか、多分もう少し低いかもしれない。
お顔の色は明るいオリーブ色でやや重厚なお顔立ち。
お顔には小さい山羊ひげと口ひげがあり、快活で温和な表情をしておられた。』
ここで注目したいのは、クララが“写真から想像していたより”って云ってることだよね。
この“写真”というのは、当然“キヨソーネが描いた西洋の絶対君主風の肖像画を撮影した、いわゆる御真影”ではある筈もなく、一般庶民――クララをその範疇に含むか微妙なところだけど――に陛下の写真が出回っていたことを示す貴重な記録だったりします」
「学校に飾っていた天皇陛下の写真のことでしたっけ? “御真影”って」
「戦前、丁度先週の内村鑑三氏特集で話題になった“教育勅語”とセットで飾られていたヤツね。
火事か何か異変が起こった時には真っ先に持ち出すことになっていた写真で、実際に持ち出し損ねて、校長先生が自殺しちゃったりする例もあるのが悲劇なんだけど。。。
で、この“御真影”。普通に考えれば、普通の写真でよい筈なんだけど、明治天皇の場合、陛下の姿を直接写したものではなく、大蔵省が紙幣や切手を制作するために雇い入れたイタリア人銅販画家のキヨソーネに“西洋の絶対君主風に”陛下の姿を描かせ、それを写真に撮って“御真影”として配ったわけ」
「目的はおおかた“箔付け”ですわね?」
「うん、大体そんなカンジ。明治の義務教育が普及するまでは、陛下の事なんて、存在そのものを知らない地域こそ殆どなかったものの、本当に“雲の上”の存在で、全然“実体”が認識されていなかったのね。
だから、威厳10倍増しのこういうやり方で、てっとり早く陛下の“偉大さ”を国民全体に知らしめようとしたんだと思う。
実際、国民に対してそれは成功したわけだし、更に副産物として、日露戦争の勝利後には西洋の植民地下にあった非白人諸国でも“偉大なる明治大帝”として認識されるに至ったわけで、今日風で云えば“イメージ戦略”大成功ってことなのかな?」
「それはイメージ戦略と云うより、第一次世界大戦君主制が崩壊する以前の世界では国家の業績は、君主の業績とみなされたが故のことですわ。
ですけれど、実際日露戦争の日本の勝利は、明治天皇を有色人種のヒーローとして祭り上げさせ、同時に欧米列強に脅かされていた国が近代化に成功するためには白人国家と戦い、これに勝つことによって近代化を達成する、という図式を作り上げたことに意味がありますの。
余談になりますけれど、第二次大戦後にアジアやアフリカで起こった反植民地闘争は、欧国家の植民地から離脱していくというプロセスである以上、欧米国家との戦争という形態を取ることになり、形の上では日露戦争と同じ構図になりましたわ。
インドネシアはオランダと、ベトナムはフランスと、エジプトはイギリスと戦い、独立を勝ち取り、この闘争を指導したスカルノホー・チ・ミン、ナセルは現代もなお“偉人”として尊敬されています。
そしてそのうち、スカルノ、ナセルが共に“親日派”だったことは、決して偶然ではない、ということですわね」
「なるほどねー。
……逆にそういう“正当なプロセス”を経ずして“棚からぼた餅”的に独立を得た国家はロクでもない因縁を付けるチンピラになりさがっていることが多いような。
第二次大戦後に出来た某国とか某国とか某国とか、特定アジアの三ケ国のことだけど」
「……アナタ、元々は清国人であるわたくしに、その同意を求めますの?
それでも、その分析は概ね間違ってはいないとは思いますわよ。
もしその三カ国が“日本軍を破り、正当な独立を勝ち取っていたとしたら”今日まで続く反日教育は、もう少し緩やかなものだったでしょうね」
「“憎い敵を倒して独立を勝ち取った”という“正当性”をその国を樹立した政府が持っていないが故に“ありもしない事実”を積み上げて“正当性”を作り上げなきゃいけない、ってことだものね。
何処で独立運動していたか日本軍も知らなかった“独立運動の英雄”が建国の父だったり、上海でエロ本密売して小金を稼いでいたチンピラ集団が“臨時政府”だったり、一応日本軍と戦っている事になっているものの、手を結んだ筈の“もう一派”に日本軍の相手を専ら任せて国内を逃げ回った事実をして“偉業”にしちゃってる国は大変だよねー、辻褄合わせに」
「……真実に“気付いてしまった”人間は国を去るか、黙して語らずではないとその国で生きていけませんのが世知辛いところですわ」
(終)


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