Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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帰ってきたクララの明治日記 第15回−2

1884年8月21日 木曜
九鬼夫人とお嬢様の衣装をととのえるのに大変忙しかった。
今日はご一緒に横浜への最後の旅をした。
九鬼夫人は熱海にいらっしゃるが、お嬢様――本当は九鬼氏の殿様の娘――は、帽子を合わせに行かなければならなかった。
お嬢様は今朝七時にここへみえて、洋服に着替えて、駅へ行った。
そこでお父様の老大名と家来に迎えられた。
兄が一緒に行ってくれて、楽しい一行になった。
殿様は立派な風采の、背の高い老紳士で、容貌はまったくヨーロッパ人のようで、明らかに大変賢い方たった。
横浜に着くと、日本の宿に行き、そこで九鬼氏に会ったが、買い物の遠征に同行すると言われた。
私たちはしばらく待たねばならなかったが、その間に殿様と愉快な話をした。
殿様は日本語しか話さないし、国外に出たこともなかった。
見聞を広めるために令嬢をアメリカに送りたいのだと言われた。
おっしゃるところによれば日本女性は広い知識がなくては母親になる資格がない。
そこで、令嬢に他人より有利になるようなことを身につけさせたいと思っておられる。
令嬢は勉強に行くのではなく、ただ外国婦人と知己になり、よい習慣を習って来るためである。
そして殿様はこう仰った。
「なかでも、キリスト教を学んで来てほしい。
私自身は神を信じることはできないが、娘には信じてほしい。
私は日本全体がキリスト教国になってほしいと思う。
もとは、悪い宗教だと思っていたが、今では世界中で一番良いものだと思う」
おお、私は自分が雄弁であって、銀の絵の中の金のリソゴのような言葉が語れたらいいのにと、どんなに願ったことであろう。
しかし私はただ熱心に、私も日本が政治的理由だけでなく、個人の幸福のためにキリスト教国になることを望むと言った。
それは、キリスト教がすべての人のために大変良いものだからである。
私はこの華族の考えと、度量の大きい見解に驚いた。
いろいろ話しているうちに、ロンドンの爆弾による陰謀についてもこう言われた。
「時に、このような残忍な方法で、同じ人間を殺そうとするこの人たちは、どんな宗教の人でしょうね」と。
私たちは九鬼氏がこの目的のために雇った立派な馬車で買物に出かけた。
そして店の主人たちを驚かした。
横浜では四頭立ての四輪大馬車はめったに見られないので。
私自身は、人力車の方がずっと便利だと思った。
私は店の主人たちが莫大な富と思われるものの前では、どんなに追従的になるかを見て嫌悪を感じた。
帽子屋の女主人のカーティスさんは、満面に笑みをたたえて、丁寧な応対をした。
薬屋は東洋人がするようなお辞儀をし、バードさんは騒ぎまくって、箱を引きずりおろし、日本の貴族のために、こぎれいな店をおかまいなく混乱状態にしてしまった。