Fate雑記(士凛特化)&血だまりスケッチ こと 魔法少女まどか☆マギカ観測所

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クララの明治日記 超訳版第34回−4

1877年8月23日 木曜日
午後日本博覧会へ行った。
思ったほど大きくはなかったけれど、なかなか素晴らしいものである。
出かけたものの刻限的にかなり遅かったので、全部見るには時間が足りなかった。
一番惹きつけられたのは美術館だったのだけど、日本人にもそうだったらしく、人が大勢いた。
ゆるやかな着物を着て扇子を広げ、自分自身が彫像のように立って見とれている者もいた。
私も美しい展示物の前を離れるのは辛かった。
東館に入ると、木綿や缶詰めの果物その他つまらないものがあった――しかし綺麗な寝室用品一式もあった。
機械館では日本人の発明した織機を見えた。
園芸館には矮性の松の木と奇妙な形をした植物が沢山あった。
農業館には、いろいろの地方から集めた種と果物があって面白かった。
動物部門は、恐ろしそうな牡牛と馬がいてつまらなかった。
美術館に次いでよかったのは西館で、立派な陶器や漆器琺瑯引きの器や、象嵌細工の家具や綺麗なものが無数に展示されていた。
富田夫人の作った枕があったが、あまり見栄えがしなかった。
ここで見物していると、辛抱強い子羊のように私たちの後からついて来たウィリイに、若い日本人が歩み寄って、こう云った。
アメリカの方ですか?」
「ええ」
フィラデルフィアの博覧会でお会いしましたね」
「え? 私たちはその一年も前から日本にいるのですよ」
それでもその人は諦めず、私たちの後、特に婦人たちの後に執拗について来た。
小柄で綺麗な顔をしていて、利口そうな表情をしていたが、極めて無遠慮だった。
二度も「どこに住んでいるのですか?」と尋ねてきたけれど、私たちは答えなかった。
どの展示物も、それぞれよく見なくてはならないのに、私たちはざっと見ただけだから、そこにあったものの描写を、今上手にできないのは当然である。